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【第三章 憎しみと剣戟と】なれのはての恋心(2)
「さっさと片付けてオレたちも王宮へ戻るぞ」
部下らに告げると、ロイは幼い顔立ちに苦い表情を浮かべ剣を抜いた。
負傷した相手を斬るのは性に合わない。
「陛下、逮捕に応じてはくれませんか」
王は無言で首を振る。
絶望に沈んだ黒い眼に生への執着がないことを見てとって、ロイは小さく溜め息をついた。
覚悟をきめ、今度は深く息をすう。
「ならばお覚悟を、陛下」
ゆっくりと振り上げられる刃が月光を受けて鋭く煌めいた。
処刑人の潔さで振り下ろした刃は、しかしカインの最後のあがきによって弾かれる。
剛剣を受けて、柄を握る手まで痺れたのだろう。
カインは自身の剣を手から落とすまいと必死なようだ。
間髪入れず叩きこむ攻撃。
それは今度はあっさりと王の手から剣を弾いた。
白い花を散らして地面に突き立つ。
武器を失い、遂に観念したかカインの手がブラリと地面に垂れた。
正義の鉄槌のごとく再び掲げられる灰色の刃。
ゴウと音立て、空気が裂かれる。
カインに向けて振り下ろされる刃。
その瞬間、二人の視界の端に黄金が舞った。
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