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【第三章 憎しみと剣戟と】なれのはての恋心(3)

「うっ……!」  突如、剣を弾き飛ばされロイがバランスを崩す。  その鼻先を穿つように刃が煌めいた。  とっさに身を引いたロイの眼前を、白光がかすめる。  これは先ほど弾き飛ばしたカイン王の剣だ。  砦の煉瓦の隙間に突き立って、刃がプラリと揺れた。 「待たせたな、カイン。こんな所で一人で死ぬつもりか」  月明かりに輝く黄金の髪。  剣の光を反射してか、翡翠の双眸は白く燃えていた。  ロイめがけ剣を投げた体勢から、ゆっくりと腕を戻す。  救世主は《レティシアの黄金の剣》アルフォンスであった。  ロイが舌打ちするより、カインが口を開くより先に金色が軌跡を描く。  アルフォンスがその場に沈み込んだのだ。  背後から襲い来るロイの部下の足を払うと、瞬時に立ち上がりその鼻先に拳を沈める。  倒れる兵士の剣を拾おうと手を伸ばしかけたところへ、今度は前方から二人の兵が。  振りかざす刃はアルフォンスの首と、防御機能のない衣服の向こうの心臓を狙っている。  剣を手にする余裕などない。  アルフォンスの足が地面を蹴った。  土くれが飛び散る一瞬の間に右側の兵士に間合いを詰める。 「ぐっ……」  手刀を手首に受け、たまらず武器を落とす兵士。  かまわず左から突っ込んできたもう一人の顔面めがけ砂礫を放つ。  視界を覆われ呻く兵士のみぞおちに拳を叩きこんだ。 「まだやる気か」

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