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【第三章 憎しみと剣戟と】なれのはての恋心(4)
立て続けに三人が倒れたことで、ロイの部下らは動きを止めた。
屈強とは到底いえぬ体格の、しかも武器すら持たぬ青年をゆっくりと取り囲む。
「アルフォンス、もういい。逃げろ……っ」
カインの叫びに薄紅の唇が笑みの形に歪んだ。
「俺は戦いが性に合ってると言ったろ。安心してそこで見ていろ」
言うなりアルフォンスは囲みの一画に距離を詰める。
片足を軸に身体を捻り、棒立ちの兵士の首筋に踵を叩きこんだ。
昏倒した兵士が地面に倒れる前に、もう一人も同様に蹴り倒される。
「さて、次はどいつだ?」
倒れた兵の剣を、殊更ゆっくりと拾いあげるアルフォンス。
いつでも誰でも叩き斬れる。
アルフォンスが軽く手首をひねるだけで、刃が空を裂く音が重く響いた。
放たれる圧に、兵士らは怯む。
だが、それで優位に立ったというわけではない。
戦闘不能になった者が数名いるとはいえ、アルフォンスの数的不利は否めないし、ロイ隊は切り札を抱えている。
「貴様、そこまでだ」
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