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【第三章 憎しみと剣戟と】なれのはての恋心(6)
「貴様なら国境線を確定して周辺国と休戦、あるいは同盟を結んでくれると思ったんだ。なのに……」
「ロイ将軍、僕が王になったのは……」
苦悩というなら、カインとて同様である。
唇を噛みしめながら絞り出す言葉を、しかし元部下は遮った。
「一年待った! だが、期待どおりには行かなかった。だから貴様が先王にしたように、首をすげ替えてやろうと決意したんだ」
今更言うのも何だが、上官としての貴様の決断力は結構買ってたんだ──そう呟くと、静かな動作で剣を鞘に収める。
「だから、とどめは刺さない。静かに眠らせてやる」
不服の呻きを漏らす部下らを視線で制して、ロイは王に背を向けた。
上官の後姿と王を交互に見比べながら、兵らは倒れた同僚を抱えてロイの後を追う。
丘の上にはアルフォンスとカイン、ふたりが残された。
色を失った花の中、これはふたりにとって最後のひとときになるのだろうか。
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