171 / 180
【終章】黄金の祝祭(12)
王宮の通用口は、普段は使用人や出入りの商人が使っているのだろう。
この混乱で見張りの兵もいない。
潜り抜けるときに何気なく振り返り、アルフォンスは「あっ」と声をあげた。
二階の窓に高く結った金髪を見つけたのである。
リリアナである。
向こうもこちらに気付いたのだろう。
王宮を出ていく二人にブンブンと手を振ってみせる。
ご機嫌な様子だ。
うまくロイに会えたのだろう。
「リリアナ嬢はどうやらあなたに夢中なようですね。いつまで持つかは分かりませんが」
「妬くな、カイン」
苦笑を返すアルフォンス。
「それよりリリアナ嬢はお前と婚約したと聞いたぞ」
「しませんよ、そんなの。あなたがいるのに」
「……そ、そうか」
語尾が裏返ったことに、カインは不思議そうに立ち止まった。
「アルフォンス? 顔が赤い」
「なっ……」
ともだちにシェアしよう!