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【終章】黄金の祝祭(12)

 王宮の通用口は、普段は使用人や出入りの商人が使っているのだろう。  この混乱で見張りの兵もいない。  潜り抜けるときに何気なく振り返り、アルフォンスは「あっ」と声をあげた。  二階の窓に高く結った金髪を見つけたのである。  リリアナである。  向こうもこちらに気付いたのだろう。  王宮を出ていく二人にブンブンと手を振ってみせる。  ご機嫌な様子だ。  うまくロイに会えたのだろう。 「リリアナ嬢はどうやらあなたに夢中なようですね。いつまで持つかは分かりませんが」 「妬くな、カイン」  苦笑を返すアルフォンス。 「それよりリリアナ嬢はお前と婚約したと聞いたぞ」 「しませんよ、そんなの。あなたがいるのに」 「……そ、そうか」  語尾が裏返ったことに、カインは不思議そうに立ち止まった。 「アルフォンス? 顔が赤い」 「なっ……」

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