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【終章】黄金の祝祭(17)

 笑いながら頬を拭ってやり、それからようやくソフィーの視線が傍らの黒装束へと転じた。  値踏みするような目つきに、カインの背に緊張が走る。 「アルよ、こいつはどうする? 殺すか?」 「いや、それは……もし必要なら俺がやる」  そうかと呟き、ソフィーは立ち上がった。 「なら構わん。アタシは王宮に入った精鋭らと合流する。おまえも早く来いよ」  言うがいなや白馬に跨り駆けていってしまう。  そのころ王宮に先んじて入ったレティシア精鋭らは、先王であるフリードを見つけ保護している。  ソフィーはフリード相手に休戦交渉のための一時停戦を取り付けると臣らを率いて帰って行ってしまった。  グロムアス国内がかつてなく混乱していることに気付いたからだ。  他国の争いに介入してもろくなことがない。  電光石火の進軍と退却である。 「さすが姉上。行動力がケタ外れだ」  ぶん殴られた頬は今も赤く腫れ、熱を持っている。  痛むはずなのに、アルフォンスの表情がどことなく満足気なのが不思議だ。 「意外でしたね。てっきり僕は天使のように無垢で可憐な女王様を想像していましたよ。あなたがあまりにその……姉上を……敬愛なさっているから」  明らかに言葉を選んだカインの言い分にアルフォンスは、しかしキョトンと小首を傾げてみせる。 「姉上は女神のように可憐で凛々しいが?」 「え、ええ……」

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