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【終章】黄金の祝祭(18)

 何か言いたげな表情で、しかしカインは言葉を呑みこむ。  せっかく《血の祝祭》の雰囲気だけでも楽しもうと強引にアルフォンスを連れ出したのだ。  水を差すことは言うまい。 「急に街を案内するなんて、まさかリリアナ嬢に対抗しているわけじゃないよな」  なんて言ってるアルフォンスに、カインの思いが通じている気配もない。  そっと差し出す手に気付く素振りも見せやしない。  王宮から続く水路にそって歩を進めながら、アルフォンスは並び立つ家々の窓を眩しげに見上げる。  陽の光の下では洋灯の明かりは灯されていないが、かわりに色とりどりの花が飾られているのが分かる。 「花なんて食べられないのに」 「アルフォンス……」  下世話な物言いに、さすがにカインも呆れたか声にため息が混ざる。  しかしアルフォンスはこう続けた。 「食べものじゃないものを、わざわざ金を出して飾りつけて楽しむ。しかも庶民たちが。うちとは国力が違いすぎるわけだな。一年という期間であっても意外とちゃんと国を治めてたんだな、カイン」 「そ、そんなことはありません……」 「何だ、顔が赤いぞ」 「そんなことはありません!」

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