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【終章】黄金の祝祭(20)

 だが、いつ国に帰ってもおかしくない。  自分とてそうだ。たとえフリード王の許しがあったとしても王宮に残ることはないだろう。  グロムアス領内の小さな町で静かに暮らせれば良いと思ってはいるのだが。  何であれ、ふたりで過ごす時間がいかに貴重なものか。  カインは繋ぐ手に力をこめた。 「どうした、カイン?」  人の間を縫って歩くこと数十分。  丘は目の前だ。  思いつめたように黙りこんだカインの手を、アルフォンスが引っ張る。  丘を登る足取りはアルフォンスのほうが軽く、遅れがちなカインを助ける形となった。  日ごろの鍛錬の差がよもやこんなところに表れるとは、なんてブツブツ呟きながらカインも素直に彼の手を借りることに。  頂上の要塞がもうすぐ見えるはずだ。  それから一面の花畑も。 「ふたりでここに来るのも……」 「何か言ったか?」  感傷にひたるカインだが、アルフォンスの返事はにべもない。 「こんなところ、これからいつだって来られるだろ」 「………………」  アルフォンスの気楽な言葉に苦笑を返すカインだが、やがて黒の眼は驚きに彩られることとなる。

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