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第2話 羞恥ストリップ※

 雲一つないイタリアンリゾートの青空。  エメラルドブルーの海が、太陽の光に燦々ときらめく。  全長300メートルほどの白い砂浜に連なる、レインボーカラーのビーチパラソルと白いデッキチェア。  波打ち際にシートをひろげ、くつろいだり、ビーチバレーに興じたりする若者の姿も見える。  一見何の変哲もない、陽気なビーチ。  だがこのビーチには、他の場所にはない、ある特徴があった。  それは―――― (……フェ……フェラ――してる……)  目の前のビーチパラソルの真下で、砂浜に膝立ちになった若い男が、デッキチェアに寝そべる中年男の股に顔をうずめ、ペニスをしゃぶっていた。  胸毛だらけの中年男が、男の金髪をつかみ、「もっと深く咥えろ!」と英語で指示をしている。  その先のパラソルの下でも、キスをしたり、手をつないだり、ハグするカップルがいたり――そのすべてが男同士だった。    限られた上流社会のエリートのみが知っているこのゲイリゾートでは、真昼間からSEXに興じる者もいる。  警察に黙認されている安心感があるのだろう。  大胆なセックスアピールをして、相手を探す売り専もいるらしい。  金持ちのパトロンをつかまえれば、人生一発逆転、セレブ生活を送れるからだ。   「何してる。早く行け」  ビーチサンダルを履き、サングラスをつけてテントから出てきた司が、岩場の陰でためらっていた椿に声をかける。  先回りした兄弟は、ビーチの真ん中あたりで椿が歩いてくるのを待つ。   (あ……も……もう……やらないと……)  覚悟を決めた椿は、手を頭の後ろで組み、胸を大きく前に突き出し歩きはじめた。   フレディ・マーキュリーがコンサートで着ていたような、派手な赤いマントガウンが、風にヒラヒラ揺れる。  突き出した乳首に穿たれた、淡水パールのビーズがちりばめられた鈴付きのタッセルのニップルクリップ。  動くたび、シャリンッ、シャリンッ、と涼やかな音を立てて揺れるビーズと同じ素材でできた金色のパールネックレスが、細く長い首周りを飾っている。  そのネックレスから放射線状に伸びたビーズチェーンの先の留め具は、乳首ピアスにひっかけられていた。 (あ……足がっ……痛いッ!)  踵部分に真っ赤なリボンのある女物のピンヒールで砂浜を歩くのは、かなりの労力を要した。  ガニ股でけんめいに踏んばっても、砂にヒールがめりこんでうまく進めない。  そのうち、マントの紐が風でほつれ、ひゅうっと飛ばされてしまった。 「あっ! あぁっ……!」  慌てた椿はマントをつかもうとして――その場に倒れ込む。  その叫び声で、ビーチの男たちの視線が一斉に椿に注がれる。  オイルまみれの全身にべっとりと貼りついた砂。  立ち上がった椿は、男たちの熱い視線に真っ赤になり、 「み……見ないでぇ……」  と半べそをかきながら、ふたたび、ひょこっ、ひょこっ、とガニ股で歩き出した。 「OH GOSH……!(なんてことだ)」 「He's so Crazy……!(イカれてるな)」    ため息とも、感嘆ともとれる声がわきあがる。  さっきまで若い男にフェラをさせていた胸毛男も、起き上がり、椿を凝視している。  マントが落ち、丸見えになった上半身。  ニップルクリップから垂れたビーズタッセルの下には、乳首とチンポを結ぶ三点リードのチェーンがぶら下げられている。  腰回りを覆う、ネックレスと同じ金色のビーズチェーン飾り。  極小マイクロミニの股間から、ギチギチになったチンポの先が飛び出し、 「やっ……!」  と身をくねらせた椿に、さらなる追い打ちがかかる。  ギャラリーに混じって見物していた司が、バイブの遠隔リモコンのスイッチを押したのだ。 「ヒッ!? いぃっ――ッ……!?」  Tバックの紐一本で固定されたバイブが尻穴のナカで暴れる音が、ビーチに響き渡る。 「アッ! アァッ! はぁぁぁッ……んッ!!!」  椿は、頭の後ろで組んだ腕をガクガクさせながら、 「もっ! もぉっ……! 歩けないッ……!」  と叫ぶ。  司が椿に指示したストリップ場所は、ビーチのど真ん中だった。  そこまでまだ100メートルほどある。   「おっ、お願いッ! バイブッ! とめてぇっ……!」  マイクロビキニからはみ出たチンポから、ピッ、ピッ、とガマン汁が飛び散る。  目の前で繰り広げられるとんでもない破廉恥ショーに、ゲイたちはことばを失う。  遊び慣れた彼らにとってもそれはかなりハードな調教劇だった。 「プッ……プリーズ! サー! プリーズ!(お願いします、ご主人さまぁ!)」  公衆の面前で醜態をさらす奴隷が、ギャラリーの中に主人の姿を見つけ、泣き濡れた目で訴える。  大きく首を振った司は、さらにバイブの強度を上げる。 「おっ! ほぉぉぉッ……!」  もんどりうった椿が白目を剥く。  涙とよだれが、ダラダラと垂れて砂浜に落ちる。  このままでは――強度MAXで、ストリップウォーキングさせられるかもしれない。 (くっ……! ウゥッ……!)  椿は歩き出す。  娼婦のような赤いピンヒールを穿き、ガニ股で、バイブの突き刺さったTバックの尻をフリフリさせ、乳首のタッセルの鈴をシャンシャン鳴らしながら。  オイルでテカテカになった肌が、その美しい肉体をよりセクシーに演出する。  腰回りを斜めに彩るビーズがサラサラと揺れて、まるでアラビアの踊り子のようだ。  なまめかしいその痴態に、男たちの股間が爆発しそうなほど隆起し――誰かが口笛を鳴らした――瞬間、大きな歓声があがる。 「いいぞ!」 「もっとセクシーに歩け、おまんこ野郎!」 「胸も大きく振れ!」 (あっ……! あぁッ……!)  恥ずかしさと興奮がない交ぜになった陶酔に頬を赤らめた椿は、突き出した胸のタッセルを大きく振る。 (おっ……おっぱいっ……! 弄りたい……!)  ムズムズした乳首にさわりそうになり、はっと思いとどまる。  主人の許可なしに、乳首とチンポはさわらないこと。  それが、奴隷の絶対条件。 (うっ、うぅっ……! おっぱいもっ、おちんぽもっ……! さわりたいよう―っ……!) 「――なんか、トランスしてない、カメのやつ?」  ――少し離れたところから見ていた統が、動画を撮っていたスマホから目を離して司に聞く。 「媚薬が回ってきたんだろ」  と答える司。 「あのバイブは真ん中に穴が開いてて、そこにローションが入れられるようになってるんだ。そこにたっぷり、エクスタシーオイルを詰めておいたからな」 「おっ……! ほっ……! おっ! ほぉっ……ンッ♡♡♡」  グリングリン回転するバイブのなかから滲み出した催淫剤に、ガニ股の脚をヒクヒクさせながら、 「おっ……おまんこぉっ……! あっ、熱いですぅッ……!!!」  と叫ぶ。  ピンッ、と乳牛のように尖った乳首が、太陽の光を受け、汗とオイルでテラテラと光る。  男のものとは思えない肥大化した乳首に、見物客たちのボルテージはさらに高まる。 「なんていやらしいNippleだ」 「FUCKしてくれと訴えてるみたいじゃないか」    ようやく、ビーチ真ん中のストリップ地点までたどりついたときには、ギャラリーの輪が何層もできていた。 「あっ……! はぁっ……! アッ……!」  全身から汗をしたたらせた椿は、男たちの欲望の視線を一身に浴びながら、 「い、いまから、ケツマンコ奴隷カメのおまんこショーをはじめま~す♡」  と英語で話し出す。  それはすべて――司に命じられたシナリオだった。  ビキニの腰紐に手をかけ、 「おっ、おちんぽっ! 見せちゃいますぅ♡♡♡」  ヘラヘラ笑いながら、リボンをほどく。  ベロン、とめくれたビキニが砂浜に落ち――乳首ピアスと三点リードでつながれた亀頭ピアスのチンポが丸見えになる。  ペチッ、ペチッ、と揺れて下腹部を叩くチンポの予想以上の小ささに、ギャラリーからどっと失笑が漏れる。 「Oh! ……How short and small dick! (なんて情けない短小チンポだ)」 (わ――笑われてる……)  顔を真っ赤にしてうつむく椿。 「ん? 何か紙みたいのが付いてるぞ?」  椿のチンポのピアスに糸でくくりつけられた短冊に気付いた男が、その紙をめくる。   『I’m ASS HOLE SLAVE♡』  油性マジックで書かれた――『ぼくはケツマンコ奴隷ですぅ♡』という文字。 「あっ……」  それが合図であるように、 「アッ……アイムッ!  アスホール スレイブッ!」  と叫んだ椿は、短冊をめくった男に、乳首とチンポをつなぐ三点リードのチェーンを差しだし、 「リードをひっぱってください!」  と頼む。 「What ?」  目をみはる男。  が、 「Come On!」 「GO!」  と周囲に手拍子され、その気になってリードを持つ。 「オッ! オォッ―――――ッ!」  容赦なくチェーンを引かれ、手を頭の後ろで組んだ椿は、ヒールの脚でけんめいに踏んばる。 「I’m ASS HOLE SLAVE!  I’m ASS HOLE SLAVE!!!(ぼくはケツマンコ奴隷! ケツマンコ奴隷ですぅ!)」  糸のように引き伸ばされた乳首と、めくれあがったチンポの皮。  狂ったように腰を振り卑猥なことばを連呼するSLAVEの姿に、ゲイたちは指笛を鳴らす。 「いいぞ!」 「もっといじめてやれ!」 「短小ザコチンポ、ふりまわせ!」 「ははっ。めっちゃ盛り上がってる」  ギャラリーから一歩下がったところで撮影していた統が、楽しそうに笑う。 「どうすんの? これから」  ニッと笑った司が、バイブの遠隔操作のリモコンをハーフパンツのポケットから取り出す。  その目盛りがMAXになった瞬間――椿は雷に打たれたかのようにガクッと倒れ込んだ。      

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