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第30話 ひとりのオメガ・ふたりのアルファ(*)(3/4)
愛の形が違っても、三人の未来しか想像できない。
「……き、好き……っ、きみ、らが、久遠……七月……っ」
「雫……」
「雫さま……」
雫の前後にいるふたりが、視線を合わせた気配がした。
「あとで、叱ってくれる? 僕と七月が勝手にきみを、共有したことを」
「な、っで……っ」
「僕らはたぶん、気持ちが重なる部分が大きいんだ。互いに譲りたくないけれど、たとえ七月のためであっても、僕を最初に指名してくれたことが、嬉しかった」
うなじの辺りを緩く撫でながら、久遠は少し寂しそうだった。こんな自分でいいのか、という雫の問いが、陳腐なものに映る。ずっと久遠はそうだった。発情促進剤に頼る投げやりなオメガだった時も、発情期がこない出来損ないだった時も、自暴自棄と大差ない愚かな選択をした雫のことを、深い愛情とともに受け入れ、許してきた。
「好き……好き、だ……っ」
あまりにも存在が近すぎて、こんなになるまでわからなかった。雫の身体を不可避な熱情が駆け抜け、悦びが生まれる。するりと開かれた雫の内腿を、久遠がひと撫でした。
「脚、開けて偉いね? 雫……好き、だよ」
「ぁっ、ぁ、ぅ……っ」
もう挿れて欲しい。久遠に、七月に、触れられて、中が蕩けそうになる。この感覚は促進剤からきただけのものではない。オメガの身体が発情しているせいだけではない。久遠と七月が相手だからこそ、自覚する感覚だ。
それを悟った瞬間、大きな波が雫の内部から起こりはじめていた。強欲でも未熟でも、はしたなくねだるふしだらなオメガでも、もう、いい。そう認めた雫に、ふと久遠が表情を緩めた。
「きみを愛しても、いい……?」
「んぁ……っ」
緩くほどけた膝裏を、後ろの七月が両手で引き寄せ、固定する。あさましい場所を晒すことに恥じ入ると、久遠が下着の布を押し上げている先端をぐっ、と押した。
「ぁ、ぁっぁ……っ!」
雫が身体を震わせた刹那、びゅく、と先端から白濁がどろりと吐き出される。固定された脚をばたつかせることもできず、快楽のあまり脚の指がぎゅっと丸まってしまう。
「たった少し触れただけなのに、こんなにするなんて……」
「ぁ、ぁぁっ、ぐりぐり、しな……っひ、ぅ……ぁぁー……っ!」
まだ布の上から、人差し指の先を少しめり込まされただけだった。出したばかりの雫のそこは過敏になっていて、再び、今度は透明な液を溢れさせはじめる。
「ぁ……出ちゃ……っ、な、んかぁ……っ、だめ、これ、だっ……ぅ、ぁー……っ!」
久遠に指先をねじ込むようにされると、勢いよく透明な水が吹き出す。
「っ……ぁ、っな、にこ、れ……ぇ、ゃっ、ぅ……っ!」
こんな快楽は知らない。水滴の飛沫を浴びてしまった久遠が、さらりとした体液を確認するように指をすり合わせる。
「きみ、いつ覚えたの? こんな挑発の仕方」
アルコールでも浴びたように、久遠の頬が染まり、雫をねめつける。
「……潮を、吹いてしまわれたのですね。心配いりません。好きだという証拠です」
「っん、ご、め……ぁんっ……なさ……ぅ、ぁっ……」
ぽろぽろと生理的な涙が雫の頬を伝い落ちる。身体の奥が恥ずかしさに火照り、もう逃げ出してしまいたいのに、迫ってくる久遠から視線を外せない。
「腰、上げて。雫」
「っ……」
下着の布を下げようと、久遠の少し冷たい指が絡む。思わずもがくと、今度は久遠が深いキスをしてくる。
「ぁむ……っ、ん、んん……っ、ふ、は、ぁ……っ」
「腰を上げて。雫」
二度目の要求に雫が唇を噛むと、先走りかどうかもわからない体液が、また下着を濡らした。
「んぅ、はぁっ……っ、ぁ、ぁ……っ」
「雫は乳首だけじゃなく、他の場所に触られても、声が出てしまうんだね?」
「ちが、ゃぁ……っ」
「違う? なら……七月に遊ばれるのも、もっとあとがいいかな? きみの可愛く尖っているここを舐めた時は、声を出していたけれど……つらくなって音を上げたくなるまで、もう少し我慢しようか?」
「ぁぁ……っ、ゃっ……っ」
雫が身をくねらせるたびに、下着が濡れてゆくのを久遠は知っているはずなのに、背後の七月に目配せをして止めると、再び雫の唇を貪る。
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