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第31話 結び結ばれ(*)(1/4)

「ぁ、ぅ……ぁっ」  後蕾をなぞられると、濡れた音がする。七月の左腕が雫の下腹へ伸び、その人差し指と中指が、草叢のすぐ上の、柔らかな肌の一点を示す。 「久遠さま……。挿れましたら、この辺りを」 「うん……」  七月に案内された久遠が、薄く唇を舐める。発情の兆しに濡れた雫の秘部は、久遠が触れると反応し、挿入を拒むようにきゅっと抵抗する。が、一瞬あとには燃えるような熱に炙られ、久遠の指を自ら食みにゆくように腰が揺れた。 「可愛いね……雫。これから、どうしようか……?」 「ぁ……ぁっ……、ぃ、言ぇ、な……っ」 「言えないようなことを、想像しているの?」 「ゃっ……」  嫌々と首を振り、激しくなる熱に雫は怯える一方、久遠の指がつぷりと後蕾を乱すと、ぬるる、と第二関節の辺りまでが自然と吸い込まれてゆく。 「ぁぁぁ……っ、ぁあぁー……っ」  それほど抵抗もなく人差し指が挿入されると、久遠は初めて眉を寄せた。 「すごい……っ」  七月に体重を預け、久遠に膝を開いた雫は、されるがままになりながら、涙を零した。七月に支えられ、曝け出した以上の痴態を、久遠に晒している。至近距離にある久遠のきれいな顔が、情欲を制御しようと少し歪められるのが、色めいていて、目が離せない。雫の中は灼熱で、上ずった声を上げながら、無意識のうちにねっとり絡む内壁が、久遠の指を締め付ける。 「きみの中、最高に熱くて狭い……なのに、僕の指に吸いついてくる……っ」 「ぁぅっ……!」 「ほら」 「ぁぅ、ゃ、ゃっ……!」  内壁を探るようにしていた久遠の指がくにくにと中で動かされ、七月の指し示した場所を目指して進む。内側を軽く押されるたびに、びくびくと身体が反応してしまう。どころか、腹側のちょうど七月が示した裏側を指で掻かれると、熱情が湧き出し、雫を煽った。 「ぁ、あぁ……っ!」 「……この、辺り?」 「はい。久遠さま」  久遠が尋ねると、七月が頷き、指先にぐっと力を込める。 「だめ、それ……っ、ぃ、っくな、ぃぃ……っ」  恥ずかしさに目を閉じ、顔を背けても、その場所を押されると理性が蕩けそうになる。久遠の指はぬくりと内部で動き、七月の示した一点を目的に、じわじわと壁を押しはじめる。大好きな久遠に何をされても、意志とは正反対に、欲情し、悦んでしまう身体につくり変えられてしまう。 「ぁ、ぁん……ぁぁっ、んんっ……、ゃ、ぁっ……ぁ! ぁ、ぁ、ぁぁぁー……っ!」  久遠の指に中を掻かれると、腰が震え、鳥肌が立った。やがて雫の屹立の先端が、白いものをどろりと溢れさせる。瞬間、大波が雫を攫い、理性や矜持といったものを全壊させ、漂白して戻ってくる。 「は……っ、ぁ……っ、ぁっ……!」  白く薄い身体を仰け反らせて震える雫に、久遠は何かを堪える表情をする。 「素敵だ……、凄く、熱い……。僕の指、好き……? こんな狭い場所に挿れてしまえるのか、疑問だったけれど」  囁く久遠が指を半回転させ抜こうとすると、絶頂を味わったばかりの内壁が、名残り惜しげに絡みつく。 「はやく、きみとしたい。雫……」 「ひっ……ぅ、ぁ、ぁぁっ……! 動、かさな……っ!」  途中まで抜かれた人差し指に、中指を添わせて、二本目が挿入される。雫の内壁は濡れた音を響かせ、反射的に腰がびくびくと震える。相変わらず七月により示された場所へ、指をねじ込むようにしながら交互に動かされると、雫は声を振り絞らざるを得ない。蕾だった場所は久遠を受け入れ、拓き、奥へと招く動作を繰り返し、雫に得難い快楽を植え付ける。 「ぁ……ぁん……っ、これぇ……っ」 「好き……?」 「ゃ、しな……っ! お、押さ、な……ぁぁっ!」 「返答、なさいませ……雫さま」  七月に窘められるほど、雫は乱れているのだろう。大好きな久遠に、こんな惨めな姿を見せたくない。なのに、一度、開いてしまうと、瞼を閉じることができない。久遠の一挙手一投足から目が離せなくなるほど、獣の匂いを濃くさせた久遠は魅力的だった。 「もっと、焦らされる方が好き……? それとも、乱暴な方がいい……? きみを大切にしたいから、今まで我慢してきたつもりだったけれど……もう、持ちそうにないかもしれない。こんなきみを、知ってしまったら」  元には戻れない。雫も久遠も、背後にいる七月も。どころか、先ほどから尾てい骨の辺りに七月の硬くなった象徴が当たっている。発情しているからか、アルファの発情が醸し出す香りが、甘い通奏低音となり、残りの理性を崩壊させる。

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