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第31話 結び結ばれ(*)(2/4)
「……っ久遠さま」
七月が雫の肩越しに諌める声を出し、つらそうに眉をしかめたのが、気配でわかる。耳元で荒くなる七月の息遣いが、雫の鼓膜に届く頃には、ほとんど暴力になっていた。欲しがられることへの充足感が、雫をより淫らに落としてゆく。
「うん……まだ、僕は正気だ、七月。でも……」
雫の内壁を押し、歪にその形を変え、覚えさせながら、久遠の指が愛液で溢れた中を優しくかき回す。
「好きな子のこんな姿を前にして、理性的でいられる方が、どうかしている……ね?」
「……お察しいたします」
細く吐き出される久遠の息が、まるで心の揺れのように震える。七月の指を頼りに、中側から小さく小刻みなリズムで、壁の感じる箇所をノックされると、乱れた水音が響き、きっと背後の七月にも、届いてしまう。脳裏に散る火花が全神経へ飛び火し、えもいわれぬ快楽が衝撃となり、雫を包む。
「ぁ、も……っ、くお……で、出、っちゃぁ……っ!」
泥濘と化した後蕾を、久遠は時間をかけてほぐしてゆく。時々、久遠が指を引くと、離したくないとでもいうように、ぎゅっと締め付けてしまい、中でありありと久遠を感じ、昂ぶるのを抑えられない。自分の不随意な動きまでもが快楽にすり替わってゆき、やがて頂点に達するかに見えた刹那、七月の手のひらが、雫の屹立の括れのすぐ下の部分を圧迫するように掴む。
「はぁ……っ、ぁ……!」
射精の悦びを封じられ、溢れ出るかに思えた白濁を堰き止められると、雫は半狂乱になった。
「ゃっ……これ、外し……っ! は、ずし……てぇ、っ! いっ……嫌ぁ……っ! な、七月……っ!」
いくら引っかいても、腰を揺らしても、束縛が取れない。そのうちに、久遠の指は三本に増え、七月の示した場所へ向かう形で不規則に動かされると、もう正気ではいられなくなる。
「ひぅ、ぃきた……っ! も……っ、欲し……っ、欲し、からぁ……っ!」
「……まだ、です。つらいですか……? でも、あなたが望んだことです、雫さま」
七月の非情な声とともに、こめかみにくちづけられる。泣きじゃくって快楽に溺れる姿が久遠にどう映っているかなど、どうでもよくなるほどに雫は追い込まれていた。最後に残った矜持を崩落させるように、緩急をつけて中を捏ね混ぜられると、雫はいつしか足りない性感を求め、身体を拓いてゆく。
「ぃ、かせ、て……っ、ぃか、せ、てぇ……っ、願……っ、ね、がぃぃ……っ、も、がま、でき、な……っぅぁ、ぁぁっ……、ぁあぁぁっ……!」
七月にもこんなに焦らされたことはない。終わりの見えない快楽を与えられ続けるのが、こんなにきついとは思わなかった。雫が息を切らせ、久遠と七月に交互に訴えるつもりが、そのほとんどは言葉未満の甘い悲鳴にしかならない。そしてその悲鳴を吸い取るように、久遠が唇にたくさんのキスを降らせる。
「ぁ……ぁっ、も、し、して……ぇ、挿れ、て欲し……っ、久遠……の、好きに、して、い、から……ぁっ」
啄ばまれる間、泣きながら、表情が把握できないほど雫はくしゃくしゃになる。
「雫……っ」
「そろそろ、頃合いかと……」
七月は久遠に促すなり、雫を堰き止めていた手を外す。だが、過度に制御され続けた結果、雫の屹立は、すぐには射精に至ることができないままだ。七月の両腕が、雫の両膝の裏をぐいと引き寄せると、しとどに濡れ光る局部が露わになる。
「ぁ……ん、久、遠……っ」
両脚を開いて、誘う眼差しを無意識なまま久遠に向けると、久遠は一瞬だけ七月へ視線を絡め、決意をもって雫に覆い被さってきた。
「きみが、欲しい……ずっと欲しいと思ってきた。奪うことになっても、欲しくてたまらない……ごめん、雫……っ」
謝るのは雫の方なのに、久遠は朱に染まった頬のまま、決意を固めた目になった。
「ぁ……ぁ、っして、挿れ、てぇ……っ」
久遠が雫にくちづけながら、自分のベルトを解き、前をほどく。スラックスの生地の上からでもわかる硬質な象徴が露わになると、大きく育った長い幹の先端が張り出しているそれを、綻んだ雫の後蕾に擦り付け、上下に行き来させ、悪戯な愛撫を繰り返す。
かと思うと、やがて我慢が限界にきたのか、みり、と音をさせて後蕾の攻略に乗り出す。
「は……ぁ、っ……挿入……って、ぇ……、ぃっぅ……拡、が……ぁっ」
「力を抜いて、雫さま……大丈夫です。今のあなたなら……っ」
奥歯を食いしばっているのは、雫も、七月も、久遠も同じだった。育ててきた花が散らされる瞬間を、七月は見せられているからだろう。花を散らす運命を、久遠は背負っているからだろう。
七月の指先に力が入り、雫の肩に膝が付きそうに身体が曲げられると、先端が、奥へ、ぬるんと挿入ってしまう。
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