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第31話 結び結ばれ(*)(4/4)
「ぁぁっ、乳首、っきちゃぁ……っ! な、かぃ……っ! すご、すごいの、きちゃ……ぁあぁーっ!」
逃れることも、後ずさることも許されないまま、いつしか七月の拘束も解け、雫は自ら喘ぎながら、久遠の腰に脚を絡めていた。熱杭で下腹を抉られているというのに、味わったことのない大きな悦楽が、波となり雫を攫おうとする。
「雫……っ、いつ、出そう、か……っ? きみ、が、決めて、いい、よ……っ!」
「あまり乱暴にされますと……あとがつらいですよ、久遠さま……っ」
「……知ってるっ」
久遠の剛直が容赦なく突き上げる中、抱き合った身体の結合部が見える。久遠のあれを食んでいることが、未だに雫には信じられないが、白旗をとっくに上げたはずなのに、まださらに高みがあることを予知していた。
ひとつに溶け合うように、互いに求め合いながら、共食いでもするような有り様に、七月には映っているかもしれない。それでも、久遠は止まらないし、雫も止まることができずにいる。七月に全部を視姦されながら、愛情を確かめ合っている倒錯的な事実に、少しも疑念を覚えないまま、雫は「好き……っ」と言い続けた。
やがて快楽と恥辱にまみれて泣きじゃくる雫に、久遠が耳元で囁く。
「きみが、決めてくれないと……っ、いつまでも、このまま、だよ……っ?」
「ぁ、ゃぁ! ぃく! ぃっ、ぃく、から……ぁ! も、ぃっ……! ぃっま、ぃ、って、ぃってぇ! くお! いまぁっ!」
「了、解……っ!」
それまで激しさ任せに突き上げていた久遠の動きが、奥を拓くように捏ねる動きに変わる。かと思うと、今まで経験したことのない、高みへ連れ去られ、崖下へ突き落とされる感触に晒された。
そして、再奥の壁だと思っていた場所に、みり、と先端が触れた瞬間。
「ぁっ! ぁ! ぁーっ! くぉっ……、そっれ、した、らぁ……っ!」
背後の七月がその刹那、雫の腰をぐっと入れるように押す。そのまま乳首を弄られながら久遠に後蕾を突き崩されると、容量をとっくに超えた悦楽に蕩けることしかできなくなる。
刹那、何度目になるかわからない絶頂を迎えた雫の最奥に、久遠の精液が叩きつけられる。
「ぁ――熱ぅ……っ!」
熱を帯びた大量の体液を肚の奥に撒かれた雫は、くしゃくしゃに乱れたまま、その身体からがくりと力が抜けてしまう。
「雫――……好きだ。幸せだ……きみを、こんな形で落とす日がくるなんて……」
「んっぁ……」
それから、不意に黙った久遠は、七月の左腕の、自分が付けた傷をなぞった。
「きみにも……感謝を」
「とんでもございません……久遠さま」
七月のワイシャツの左腕の袖あたりには、古傷と一緒に新規に付けられた久遠の噛み跡が残っている。痛みから発情を免れたらしき七月は、まだ眦を朱く染めていたが、雫を気にかけながら、久遠に笑みを見せた。
やがて雫の痙攣がおさまると、久遠のまだ硬いものが引き抜かれる。
「次は……七月に、可愛がってもらおうね……? 雫」
「ぁ……ん……挿れ……てぇ……っ」
発情促進剤の威力を全身で受ける雫に、果たして声が届いているか、定かでなかったが、久遠は愛おしそうに雫の額にくちづけると、少し気が済んだ表情を七月に向けた。
「欲しがるうちは、ぜんぶあげる。嫌だと言うまで、僕と七月のすべてを――」
水を向けられた七月が、背後から雫の少し柔らかくなった後蕾をなぞる。
その指が雫の愛液と久遠の精液に濡れたのを見ると、切なげに眉を寄せ、久遠と場所を入れ替える。
「私が雫さまを抱く理由が、あるでしょうか……?」
「あるよ。だって、僕の豹変を見ているだけなんて、狡いじゃないか」
「ですが……」
「きみも必要なんだ。僕らには」
久遠は頷き、雫の髪を梳くと、もう聞こえていないだろう耳朶に囁き、そっと甘噛みする。
「だって……雫が欲しがっている。ほら」
若いふたりのアルファは、互いの体液が混じることを歯牙にもかけず、ただひとりのオメガを愛し続けた――。
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