99 / 118
第34話 宴のあと、最終決戦(1/2)
式が済み、披露宴がはじまると、久遠が七月のことを、雫とともに西園寺家にくる第二のパートナーだと紹介した。
両家に連なる者らが総じて色めき立ち、雫も腰を抜かすところだったが、七月とは事前に合意があったようだ。刺さる好奇の視線から雫を守るように、隣りで群衆の興味を一手に引き受けた七月は、列をなす客らを捌き続けた。
泰衡は宴の間中、雫らを一顧だにせず、酔いが回ったと言い置くと、いつの間にかホスト役も早々に、引っ込んでしまった。対して、久遠の父親である恒彦は、落とされた爆弾にも極めて冷静で、久遠に何かを耳打ちされると、始終、控えめな態度で淡々と客らをあしらいはじめた。いったい何を吹き込んだのか教えてもらいたかった雫だが、宴の最中の久遠は優雅な笑みを浮かべながら、極度の緊張状態にあり、ゆっくり話をする機会が訪れなかった。
披露宴が終わるや否や、身辺整理と音瀬家での仕事の引き継ぎ諸々を課された七月は、一時的に雫の傍を離れ、別行動になった。雫は久遠とともにインペリアル・スイートへ戻ると、私服に着替えるまでは一緒だったが、濃い情交のつけが回った雫がソファに沈んでしまうと、久遠は次の間で、仕事関係らしい電話をかけ続け、しきりに何かを確認していた。
甘い時間が流れるのを期待していた当初とは、だいぶ違ったが、久遠に信頼を寄せる雫は、ただ時が流れるのを待つだけだった。
その時がくれば、久遠とまたひとつになれる。七月とも、一緒にいられる。
発情促進剤で強制的に発情させられた身体は、関節のあちこちが軋んで熱を持ち、書斎から漏れ聞こえてくる久遠の意味不明な単語ばかりが羅列された会話を子守唄代わりに、雫はいつしか睡魔に手を引かれ、安息の眠りへと落ちていった。
*
ともだちにシェアしよう!

