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第39話 愛咬(*)(1/5)

「扉、開けたままで……?」 「ぅん……っ」  途中で七月が戻ってきても、混じることができるよう配慮する久遠の気持ちが胸に沁みる。くちづけの合間に意思確認をした久遠に組み敷かれた雫は、優しいが、獣めいた大きく美しいアルファの動きを見上げる。もう走り出した鼓動を制御する理由はない。 「ぁ……ん、ぁ……っ」  腰紐がほどかれ、ローブが左右に開かれ、露出した鎖骨から臍にかけてを撫でられると甘い声が出た。 「腰、揺らして……欲しい? 雫……」 「んっ、ぅん……っ」  欲情を露わにしても受け止めてくれる久遠に、かけがえのない気持ちを抱く。突発発情の時の記憶は断片的なものだが、交わりのすべてを覚えていなくても、久遠と七月がどんなだったかは、少しならわかる。だから、素直になれた。 「中……も、っしよ……? さっき、みたいに、ぐちゃぐちゃ、に、かき回して……っ」  飼い主に噛み付く子猫をあやすように、久遠に宥められるのが心地よい。久遠のフェロモンの清かな匂いに混じり、濃厚な雄の香りが漂いはじめ、雫の理性の箍を外す。 「欲、しい……っ、きみ、が……っ、久遠……っ」  焦れて久遠のローブを掴んだ雫は、強引に引き寄せ、恍惚と苦悩を剥き出しにもがいた。その行為がアルファの目にどう映るかなど、配慮する余裕もない。眦を朱に染め、互いに裸に近い状態で、雫が膝を立てると、久遠は幸せそうに困惑を滲ませ、言う。 「困った子だ」  柔らかなキスを落とされるたび、どこに触れられても小さな爆発が起きる。久遠は雫に覆いかぶさると、屹立した自身の先端を、雫の下腹にぐり、と擦り付けた。鈴口がぬめって、透明な液で肌が濡れる。久遠も感じてくれているのだ。この行為を望むのが、雫ひとりじゃないことに、胸が熱くなる。 「このあたり、好き……?」 「ん……っ、んっ、んぅ……っ」  張り出した先端が雫の下腹部の皮膚の薄い辺りをまさぐり、同時に久遠の手が雫の内腿を撫で、後孔へとたどり着く。 「っきみは、煽るのが上手い」  キスの合間にねだりがましい声を上げる雫に、久遠も興奮しているようだった。突発発情への対処のために、何度も抽挿を繰り返された雫の秘部は、まだその名残りのためか、柔らかく泥濘んでいる。濡れた内壁へゆっくり久遠の指が挿入され、丁寧に探られると脳裏に白い星が散った。 「ぁぅ……っ、ぁっ、ぁ、それ……っん、っ……もっ……と」 「僕と、七月の形、覚えている……? 僕は……きみの形、覚えていると思うよ」  言い、久遠が雫の中にある指を曲げる。 「ぁっ……っ!」  心地いい場所を緩く押されて、ひとりでに雫の身体が跳ねる。意思とは無関係に、侵入してきた久遠の指を絞るように内壁が収縮し、中と外から快いところを挟まれると、鮮やかな快楽が雫を襲った。 「雫の中、ぎゅっとなるね……? ここ、好き……? それとも、ここ? それか、ここがいい?」 「ぁ、あ……っ、あぁぁ……っ、ぇ、選べ、な……っ」  過ぎる快楽に身悶え、感覚を逃がそうと身をくねらせるが、久遠はしばらく慣らしたあとで指を足すと、散々、捏ね回した腹側の粘膜に狙いを定め、緩くリズムを取りながらじわじわと押しはじめた。そのまま雫の胸部へ顔を伏せると、快感に凝りつつある乳首を唇と舌で弾く。途端に閃光のような快楽が、雫の体内を駆け抜ける。 「ぁあぁ……っ」 「きみの、弱くて、いいところ」  久遠は「あまくておいしい」と囁き、味わうように責める。強すぎる感覚に泣き出す雫を追い込むことに容赦がないまま、たまらず「落ちちゃう」「いっちゃう」と雫が怯えると、けろりと促す。 「飛んで。受け止めるから」  大きな波に溺れてしまえと唆された雫は、言葉が喉奥で単純な音に分解されてゆくのに任せざるを得なくなる。 「ぁっ、んっ……んぁ、ぅぁ……っも、ぅぁ、ぁぁ……っ!」  高みへ追いやられ、久遠の垂れかかったローブの端が時々、掠る他は、まだ触れられてもいない雫の昂りの先端から、白く濁った液体がどろりと吐き出される。 「はぁ、っぁ……! は……ぁ、く、ぉ……っ!」  達した雫の内壁に強く絞られた中指を、さらに折り曲げ、同時に下腹に圧をかけると、すぐに、次の波がくる。 「ぁっ……ぁ! くぉ、だ……っめ、ぃ……って、る……ぅ!」 「……うん」 「も……っぃ、てる……っか、らぁ……っ!」 「うん……知ってる。だから、もう一回」 「ぁ……ぁあぁぁ……っ!」  弱音を吐いた雫の弱い場所を、ぐりぐりと挫かれる。泥濘んだ水音とともに、放心すら許されない高みへ放り投げられようとしていた。でも、これでは雫ひとりが感じるだけで、久遠が遠い。

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