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第39話 愛咬(*)(4/5)

「久遠さま……っ」 「うん、するよ――雫、いい?」 「んっ……ぅんっ」  最終確認とともに、久遠はそれまで挿入していた指を抜き、雫の両膝の裏を持ち上げた。濡れた久遠の興奮が半分ほど抜かれ、雫の中が朱く捲れ上がるのが、七月に晒される。 「雫さま……っ」 「し……て? 七月……も、一緒、に……っ」  欲しいと訴え、雫はほどいた両手を太腿の内側へ持ってゆき、久遠を食んでいる後蕾の縁を、指で少し広げて見せた。 「ここ、に……っ、ここに……ぃ、挿れて……」 「っあなたは――……っ」  突然、七月に深くくちづけられる。痛むほど舌の付け根を吸われ、口内をかき回されるたびに雫はくらくらした。 「……っ、挿れます」 「うん」  短くアルファ同士で意思疎通すると、ベルトをほどいた七月が、雫の後孔に屹立を沿わせ、腰を進める。 「ぁ……!」  七月の指先に乳首を摘ままれ、爪の段差で引っかかれると、雫の腰は簡単に揺れてしまう。欲しくて仕方がなくなって、上手くものを考えることも、伝えることも、できないほど乱れてしまうのを、知られているのだ。 「ぁ、んっ、ぁぁ、んんぅ、んぅ……っ!」  太い剛直が二本、裏筋を合わせる形で雫に侵入してゆく。躊躇いや怖れがあったとしても、それはごく初期の段階に過ぎない。やがて久遠と同じ深さまで七月の屹立がぬぷぬぷと侵入すると、雫の膝裏を持ち上げていた久遠が、少しずつ腕の力を抜きはじめる。拓かれたことのない奥がじわりと拡がり、壁を押し上げるたびに規格外の愉悦が雫に襲いかかった。 「っ~~――……っ!」  快楽のあまり声が出ず、やがてひたりと肌と肌が接触する。根元まで挿入された二本の昂りに、奥の壁を歪にこじ開けられると、ぱしゃっ、と水音がし、雫は背中が痺れる感覚に襲われる。 「ぁ……っ? お、れの……から、だ、どう、なっ……っ」  怯んでしまうと、七月がリカバーする。 「潮を……吹いてしまわれましたか……」 「雫……痛いところはない? 苦しいところは? つらいところは?」  久遠に耳元で、震え揺らぐ声で囁かれる。痛みはなく、つらくもない。苦しくはあったが、想像以上の高みへ上りそうなことが、少し怖いだけだった。自分が自分でなくなりそうで、雫は「手を……」とふたりにねだる。 「……も、ちぃ……?」  昂ぶったまま前後のアルファと繋いだ手が、命綱のようにかけがえのないものだ。そのまま雫が腰を左右にゆっくり振ると、久遠も七月も息を詰めた。 「これ、は……っ」 「な、んと……っ」  耐えるような声は、少し情欲を滲ませている。 「おれ、は……ぃー……、ょ……?」  快感の十分の一も伝わっているか怪しかったが、肚の中を満たされ、じわじわと揺らすだけで、中の巨幹が擦れ合い、大波が何度も雫を押し流そうとする。この感覚をふたりともに味わわせ、返したい一心で、雫は久遠と七月の両者と手を繋ぎながら、腰をゆらゆらと揺らしはじめる。 「狭くて……熱くて、すごい……っ」 「は、い……っ、七月も、です……っ」  長くはもたないだろうと察せられる声に、雫はこのまま攫われるのを熱望し、やがて横揺れに縦揺れを加えはじめる。 「ぁっ、は、ぁ、ぁっ、ぁぅ、っは、んっ、好き、す、好き……っ、ぃぃ……っ」  雫の動きに合わせるように、三人で練り上げるように揺すり揺すられ、悶える。七月から、言葉を吸い取るようなくちづけを受けながら、もみくちゃになりながら、久遠に背後から抱かれる。雫がかくりと首を折り、七月の肩に汗ばんだ額を預けると、頭を撫でるように抱かれ、囁かれる。 「久遠さまに……捧げられますか……?」 「んっ」  欲しい問いをもらい、こくこくと数度、頷く。いつしか七月の身体にしがみつくように腕を回した雫は、しなだれかかりながら背後へと言葉を紡ぐ。 「噛んで……っ、久遠……っ、きみ、の、もの、に……っ」  久遠に、所有されたい。今すぐ永遠に。死が互いを分かつまで、一緒にいる証が欲しい。  激しく抽挿されながら、久遠が息を呑むのがわかった。犬歯が育ち、大きく口を開けた久遠の牙が、露出したうなじの皮膚をざくりと破る音がする。そのまま濡れた破裂音とともに、強く噛まれるが、衝撃のさらにあとで痛みがくる。同時に高い波がきて、そのまま三人で流される。 「ぁ、ぁー——……っ」  声が出てしまうのを抑えられない。後孔に食んだアルファの二本からくる刺激とは、明らかに別種の快楽が、雫を押し流そうとする。鈴口からは透明は液が溢れていたが、やがてそれに白いものが混じりはじめると、同時に前後のアルファが、雫の奥に射精するのがわかった。

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