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第39話 愛咬(*)(5/5)
「は、ぁ、っ、ん、っ……」
熱い飛沫が雫の中に撒かれるに任せ、高みに上り続けながら、その上がまだ存在することを知ってしまう。快楽に嘘はない。じわりと愛液が溢れ出る。ふたりのアルファにいいようにされ、自らも腰を振りながら、もう甘えることしかできなくなる。
背後から久遠が腕を回し、七月ごと雫を抱きしめる。七月もそれに倣い、強く抱擁する。
「ひとつ、に――……っ」
後蕾をかき回されると、内側からぐずぐずに崩れてしまいそうになる。二人のアルファに前後から抱きしめられた雫は、その瞬間、甘く鋭い声を上げた。同時に久遠と七月が、重なるように低く呻く。悦楽に耐え、雫を想い、愛を確認するかのように衝動をぶつけてくる。負担を強いられているのは雫だけでなく、ふたりのアルファも、何度も襲いくる愉楽の波に耐えているのだ。
「中、が……、っ雫……っ」
絶頂を迎えた雫の後孔は、アルファのふたりを強く締めつけた。脈打つ久遠と七月を隙間なく食んだ雫の後蕾は、達したあとも続く快楽を訴え、心臓の鼓動と同じ速さで収縮を繰り返す。身体を食い破るような、えもいわれぬ愉楽を堪えられずに、腰が跳ね、もう制御することがかなわない。
「雫さま――……っ」
久遠の背中に回されていた七月の腕が、片方ほどけ、雫の頬を撫でる。
「大丈夫、です……っ、私も、久遠さまも、……っです、から……っ」
艶やかな快楽に溺れ、沈みそうになっていた雫を救い出すように声がかけられる。ひとりと繋がるのは、突発発情の時に経験済みだ。けれど、三人でするのは初めてだ。無意識のうちに収斂する中に、過ぎる刺激をどうすればいいのか、雫にはわからない。
「きも、ち、ぃ……っ?」
つい、尋ねてしまうと、抱擁している腕に力が込められる。
「うん……っとても、いいし、素敵だ」
「七月も、です……っ、雫さま……っ」
少年の面影をどこかへ残し応える、アルファたちの声が震えていた。
「おれ、の、中、いっぱい……っ」
頭がくらくらして、指先が甘く痺れる。もう終わりが近いことを三人とも悟り、次第に揺らめく幅を狭めながら、やがてしっかりと抱き合うと、荒い息のまま、何かが満ちゆくのを感じる。
「ん……中、ぐりぐり、好き……」
再び、静かに達した雫の呟きを、久遠が拾い、七月が同意する。
「可愛いね、雫は……」
「まったく、同感です……久遠さま」
「さまは……いらないよ、七月」
「……はい」
小さく弾けて消えてゆく光の粒を追うように、誰もが息を乱し、言葉少なだった。
「ぁ、っこんな、に……した、ら……」
「孕んで、しまう、かもね……?」
久遠が耳朶を甘噛みしながら、意地悪を言う。
「ぁ、混ざ、っちゃ……っ」
「もう、遅いかと存じます」
七月が揶揄混じりに言う声に感じ入り、雫は平らかで柔らかな世界へと傾いてゆく。
「愛しています、あなたと、あなたが大切になさる、すべてを……」
「僕も、きみを……きみらを……ずっと愛すると、誓う……」
そうして混じり合いながら、三人の交合は、絶え間なく訪れる波に乗り続け、鮮やかに更新されてゆく。
「おれ……っ、も……愛して、る……」
雫の声がどこまで届いたか、確認する術はない。
だが、三人は互いに、かたく結び合い、やがて静かになった。
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