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第23話 溢れる期待
シャワーを浴びながら考えてた。
飲みに行くだけかもしれないぞ? って。
けど、言ってた、から。
また恋愛したいって思わせるって。
それを本気に?
口説いてるのを本気にしたのか?
した。
本気にっていうよりも。
「はちさんの中」
「あっ……」
別に、セックス。
しないかもしれない、けど。
「すげぇ柔らかい」
でもほら、シャワーは浴びておいたほうがいだろ?
会議が主だったけど、それでもさっぱりするし。汗臭いかもしれない。だからシャワーは浴びて行こうかなって。
で、もしかしたらするかもしれないかもなぁ、って。
だから自分の指で、準備を?
しておこうかなって。
「トロットロなんすけど」
期待、してるのか?
バカなのか?
あれ、忘れたのか?
あの時、悟っただろ?
結局男同士なんてって。
悟ったよ。
忘れてないし。
忘れてないけど。
「シャワー浴びただけじゃないっすよね」
「っ、あっ……指、で」
指で慣らした。シャワーに打たれながら、帰り、まだ台風の端の雲が大雨を降らせる中で工場からビジホまでの道のりで見つけた薬局寄って。買ってきたローション使って、中ほぐして。それから待ち合わせの駅に向かったんだ。
「ヤバ……」
「あっ」
捲り上げられて上半身を剥かれて、頬が熱くなる。
「鼻血出そうなんすけど」
「っ、何言って」
「こんなにやらしい身体してる人とさっき向かい合わせで飯食ってたとか」
「なっ、に……ン」
内側を弄る指に中から絆されてく。
「ン、ん……ン」
舌先を絡め取られて、何言ってるんだって諭す言葉を遮られて、代わりに口から溢れるのは甘ったるい自分の声。
「あっ……ン、く」
鼻にかかった媚びた声。
「あ」
「はちさんって、ずっとしてなかったんすよね」
「そ、だよっ」
「乳首は?」
「っ」
「ここも弄らなかったんすか?」
「し、ない……」
「ずっと?」
「あ、待っ」
枝島が溢す言葉と一緒に落ちる吐息が乳首に触れるだけで、震える。
「ずっと、これ、はちさんのあげてくれる写真見ながら」
「……ぁ、待っ」
薄い唇が乳首のすぐそばで動いて、話して、微かに触れる。本当に微かにくすぐったいくらいに僅かにだけ触れて。
「触ってみたいって思ってた」
「あっ……あぁぁぁっ」
舌に捉えられた瞬間、長い指に奥がキュンキュン悶えた。
「あ、待っ、あぁっ」
気持ち、い。
「あぁっ」
舌で。
指で。
奥も、硬く結んで縛っておいた気持ちも、ほぐされて、とろとろにされていく。
「あぁっ」
乳首にしゃぶりつかれると声が止められない。腰が跳ねて、背中をそり返らせて、まるでその舌先に自分から押し付けて可愛がられたいと捧げるようにしてしまう。
「きっとそう思ってた奴たくさんいましたよ?」
「あ、それはっ」
言っただろ。顔が見えないから、そう思うんだよ。顔知らないから。
「皆、あの色白の肌と、細い腰がすげぇ色っぽくて」
「っ」
言いながら、枝島の大きな手が腰をまるで最中に逃がさないように鷲掴みにした。
「へそんとこ、窪みがエロくて」
「っあ」
ヘソの周りを曲げた指の関節でやんわり撫でられて、腹の奥のところがきゅっとする。
「!」
それから、ゆっくりとベッドに手をついた枝島が覆い被さって。
「そんで……」
喉、鳴った。
「このキレイな色の乳首」
「っ、あっ」
触られるって、喉奥が期待で熱くなって。
「触りたいって。俺も思ってた」
「あっ、あっ、あぁ」
口に含まれただけで感度が振りきれるくらい気持ちいい。
「っあ、あぁ」
「はちさん、俺のオカズになってましたから」
言いながら舌で転がされてコリコリになっていく。しゃぶられて大悦びして、乳首弄られながら。
「あっ、ンっ……あぁ」
ずっと片手はもうほぐれてトロトロになってるはずの中を撫でられてる。
低い声が囁く間ずっとローションがやらしい音をさせているのがたまらなくて。
も、なんでもいいって思った。
もぅ、なんでもいいから早く。
「枝島……」
欲しい。
「はちさん」
欲しくてたまらない。
そんな顔、を枝島もしてた。
男っぽい顔。汗で黒髪が濡れていて、見つめられてるだけで発情させられそうな目をして。
大きい喉仏がごくりと鳴った。
「指抜きます」
「ぅ、ん」
濡れた音たまらない。
「枝島、ぁ、ゴム」
ゴムも買った、けど、持っては来なかった。なんか準備万端すぎて、そうじゃなかったら、さ。虚しすぎるから。だからって、ゴムも買って、中準備して、期待してたのは同じなのに。
「買っといたんで」
「……ぇ」
ただそれだけでの胸の奥のところが焦げそうに熱くなる。
「言ったでしょ? また恋愛したいって思わせるって」
口説いてるのを本気にしたのか? あははは、って笑う自分がいたのに。
「俺としたいって」
けど、本当に口説かれてるのかもしれないって期待してる自分もいて。
「だから次のためにって、昨日、買っておいたんです」
今、その期待してる自分。
中も気持ちも、さっきまで飲みに行くだけでそのまま帰ることになるかもと笑ってた自分と、とろりと蕩けて、ひどくやらしい気分にさせてくるんだ。
枝島を興奮させたいって。
「あ、貸して。俺が開ける」
「お願いします」
「ん……」
舌を絡めて濃厚なキスに絆され。
「指、びしょ濡れなんで」
身体の奥が欲情に濡れてくような感じがした。
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