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第38話 溢れて、溺れて

 テレビもないし、ゲーム機もない枝島のデスクみたいにシンプルな部屋に甘ったるい喘ぎ声と、濡れたセックスの音が響いてる。無機質な部屋に熱量の高いいやらしい音と、二人分の体温も混ざって、どうにか、なりそう。  弾みやすいスプリングのベッドは枝島の突き上げの度にくらりと揺れて、少し目眩がした。  枝島の激しい突き上げをベッドのスプリングが手伝っているみたいに、ひと突きされるごとに快感が増してく気がした。感度、おかしくなりそう。 「ひゃ、あっ」  乳首を甘噛みされながら。 「あ、あ、あっ」  奥をされるのが、たまらなく気持ちいい。  もっとされたくて、背中を逸せて、寡黙な唇に自分から乳首を押し付けると。 「治史さん、エロいっす」  こんな時だけおしゃべりな唇に咥えられて、舌先に溶かされそうな愛撫をされて、奥がきゅんって締め付けた。枝島の太いのがずるずると抜ける、カリに擦られる快感と、奥をもっと深く貫かれた時に与えられる激しい快感、どっちも味わって気持ち良くなろうとしゃぶりついてる。 「あっ、ン」  パンっ! って、勢いをつけて突かれて、軽くイクくらいに、気持ちいい。 「あ、あ、ああぁっ、ン、待っ、あんまっ」 「やだ」 「やだ、じゃなくてっ」  枝島のがっつくような抱き方に奥まで蕩けてく。 「あぁっ」  激しい突き上げと奥まで貫く熱もひどく熱くて、ドロドロに溶かされそう。  でも欲しがりで夢中になって腰をくねらせてるのは俺。  気持ち良くてたまらないって、喘ぎまくって。 「枝、島っ」 「っ」 「あぁ、そこ、激しい、い、イク、からっ、待っ」 「イヤっす」 「あぁぁ」  なんか、いつもよりも熱くて、硬くて。 「声、聞きたい」 「あぁっ」 「貴方の声」  奥にぐりぐりとペニスの切先を押し付けられて、また、達した。枝島の熱に触れるのダメなんだ。身体がおかしくなる。感度だって、もう、なんか。  ほら、おかしくなってる。腹の上が自分の出したもので酷い有様だ。 「あ、待っ」  前屈みになった枝島の腹筋にイッたばっかりの俺のが押し潰されるように挟まれて、ゾクゾクする。 「ふ、ぅ……や、ぁ……ん」 「はぁっ」 「あ、枝島、待っ、休憩」 「無理、止まんない」 「あぁぁっ」 「気持ちい」 「ん、んんっ」  キスしながら、奥を突かれて、ずっとイッてるみたいだ。快楽で溺れそう。 「あ、はぁっ、あン、あっ……ン」 「嘘みたいって」 「?」  な、に?  今、独り言みたいな小さな声が何かを呟いて、熱に溶かされかかってる俺は揺さぶられながら、その独り言を聞き取ろうとベッドの上で俺に覆い被さる枝島を見上げた。 「実感なかった。あの時、俺の部屋で、俺のベッドで治史さんを抱けたこと」 「……あっ」  目が合うと、溶けそうだから、ずっと目は合わさないようにしてた。特に今夜の枝島は俺のことを欲しがる熱量が半端じゃなくて、俺も欲しくてたまらないから、それを全部注がれると指先までドロドロに溶かされそうで。  枝島のセックスは、気持ち、良すぎるから。 「あっ」  腰を逃さないって鷲掴みにされたまま、そんな熱に浮かされた戯言みたいに枝島が囁いて、キスをする。 「また抱けたのが、めちゃくちゃ嬉しい」  背中を丸めて唇同士を触れ合わせながら囁いた、独り言に、溶かされそうになる。  熱すぎて奥がジンジンする。  前はドロドロで。  こんなの、は、もうたまらない。  こんなのはやばい。 「あっ、もっ、またっ」 「っ」 「あ、あ、あぁ、やば、いっ、イク、イクっ」 「治史、さん」 「あぁ、そこ、イクっ」  何度もノックされた奥が枝島の熱にしゃぶりついて、しがみついて。 「あ、イクっ」  音が。  溢れそう。 「治史さん」 「あ、やば、いっ、声、出る、止まんなっ」 「治史、さんっ」 「だから、声」  キスをした。 「塞いで……」  深く、舌を絡めて、奥まで丸ごと枝島のと繋がりながら。 「っ」 「ん、ンンンンンっ」  首を傾げて、キスで口を塞ぐと、全部、を塞がれた。 「っ、ん、んんっ、ン、んっ……むっ、んんっ」 「治史さんっ」 「あ、イク、イク、イっ、ク……ンンンンン」  ちょっとでも隙間があれば熱が唇から溢れてきた。 「あっ……ンンンン」 「っ、はぁ、はぁっ」 「あっ……は、ぁ……」 「すげ、治史さんの中」 「っ、あっ」 「キスしながら突くと、中、めちゃくちゃ気持ちい」 「お前、なぁ、あ、待っ、は? まだ? 元気とか。それに、キスしながら、は、やっぱ、限界がっ」  どうしたって声出るだろ。キスで塞いだって声が消えるわけじゃないし。息は乱れるし、それに、セックスの音は消えないし。だから、やっぱり。 「治史さん、もう一回」  今、この行為に夢中だったなんて。 「したいっす」 「っ、あぁっン  枝島が言いながら、胸にキスをした。愛撫されて仕立てられた乳首をまた甘噛みされて、奥が気持ち良さそうに、キュって、抜かないまま萎えることもない枝島のにしゃぶりつく。 「治史さんの身体も、もっとって」 「言って、なっ……あぁっ……ン」 「言ってる。っ、中、エロ」  そして、ゆっくりとまた中を擦り上げられながら、おしゃべりになった口に口を塞がれる。 「……ん」  舌で誘われるように、絡め取られながら、内側を擦られて。 「あっ……ン」  零れ落ちた甘ったるい声。  甘ったるいセックスの音。  それから。 「治史さんっ……」  枝島の、熱に湿った声が、小さなワンルームに満ちた。

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