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第46話 見たかった

「はち」の話をずっと薄暗い岩盤浴のシートに寝転びながら聞いていた。  どの写真が気に入って、何度も見てたって。あれもよかった、これもよかった。なんて聞くのは興味深くて、くすぐったくて、身体の芯が何度か熱くなった。  岩盤浴のせいだけじゃない。  宿泊するホテルまでの移動の間も、こんなふうに身体の芯がじんわり奥まで熱くなんて、きっとならない。 「治史さん、荷物こっちに」 「あぁ」  スパのすぐ隣にはホテルも併設されているのだけれど、枝島が案内してくれたのは、その併設されているホテルではなく別の、送迎バスが来てくれる、少し離れたところだった。 「素泊まりっすけど、ホテルの近くにコンビニもあるし、ルームサービスも頼めるんで」 「あぁ」  じっとしているのが少し辛くて、その送迎バスでの移動の間が焦れったくてたまらなかった。  夕飯は、後で。  昼食遅かったし。  だから、後ででも大丈夫。 「シャワー浴びてきていいっすよ」  セックスの後でも、大丈夫。 「……あぁ」  欲望混じりな気のする、少し強い眼差しから逃れるようにバスルームへ向かった。一日の大半を温泉で過ごしてたし、岩盤浴の後も、汗を流したし。だから、汗とかは大丈夫だけれど。でも、準備はしてなかったから。  シャワールームはベッドのある部屋のすぐ隣だった。郊外だから、夜景とかは期待できそうにないけれど。モダンな洒落た作りのホテルだ。  すごいな。バスルームの中、隣にあるトイレも全部ガラスだ。曇りガラスになっているから中の様子は見えないけれど、洗面台もガラスでできていて、スケルトンな仕様バスルームは綺麗に掃除が行き届いている。  そのバスルームのガラスの壁にくっつけられたフックへローブを引っ掛け。 「……っん」  きっと出たら抱かれるんだろうなと思いながらローションをまとわりつかせた指で孔をほぐそうと。 「!」  した時だった。  シミもなければシワだってひとつもない、壁紙だと思っていたものがゆっくり、まるで映画のスクリーンがこれから上映でも始めるみたいにロールアップされて、バスルームの中が丸見えになった。 「! なっ、に」  驚いて、近くに引っ掛けておいたバスローブを羽織ると枝島が俺の名前を呼んだのがガラス越しに聞こえた。  部屋とバスルームを行き来するのもガラスの扉になっていたけれど。でもバスルームと部屋の間には白い壁があるんだと思ってた。  壁紙じゃなく、カーテン、だったのか。 『こういうとこないかって、探したんす』  ロールアップのカーテンがなければ、全て見えてしまう。全部ガラスなんだ。トイレだけが曇りガラスで本当に見えなくなっている。 『この前、見せてもらえなかったんで』  枝島の声が遠くから聞こえた。  分厚く丈夫なのだろうガラスの向こう側から聞こえてくる低い声。 『見たい』  やば……い。  こんなの恥ずかしくてたまらないのに。  でも、興奮、した。  ずっと岩盤浴で寝転がっている間、枝島の口から聞かされる「はち」はきっとあの眼差しを向けられてたんだろうって。  熱くて、それこそ、手、指の付け根にあるホクロだって見逃さないくらい。  じっと。  肌に視線が絡みつくような。  そんな視線に晒されてると、喉がゴクリと音を立てる。 「見ても、楽しくないから、な」  興奮が、膨らむ。 『楽しい』  断言されて、指が触れたそこがキュンって口を窄めた。  白い壁だと思っていたロールアップされて天井にカーテンをくっつけたガラスの壁に手をついて、少しだけ脚を開く。  枝島はそれを特等席で見物しようと、ちょうど正面にあるベッドの端に腰を下ろした。  すごいことをしようとしてる。  セックスの準備を眺められるなんて。 「っ、あっ……あぁっ、ン」  でも、枝島が見ているって思うと、自分の指を咥えただけでイキそうなくらい気持ちよかった。 「あぁっ」  後ろに回した手、指が濡れた音をバスルームに響かせながら、中に入ってくる。 「あっ」  この濡れた音も聞こえてる?  ちらりとガラスの向こう、ベッドへと視線を向けると、じっと見つめてる枝島とバチっと音がしそうなくらい目が合って、思わず逸らしてしまった。  そして顔をあげることなく、そのまま指で中を擦る。 「ん、ふっ……ンン」 「はち」は動画をあげたことはない。何度か、見たいってリクエストはもらったけれど、いつどこで身バレに繋がりそうなものが映り込むかわからなかったから。 「これ」は見せたことがない。 「あ、あぁっ」  一人でしてるところは。 「はぁっ、ンンっ」  つい数日前にも抱かれた身体は久しぶりだった「初めて」よりもずっと難なく指を咥えて、その内側をトロトロにさせていく。 「あっ、あっ」  奥、とろけてる。  それなのに、視線を感じると、指を咥えた中がきゅぅんって締め付けて。下腹部、自分の指じゃ届かないし、自ら開くのは少し怖くて。  それに。 「あ、枝、島、ぁ……ン」  あの指が欲しい。 「あ、こ、こ……」  あの指で中から撫でられたい。 「……ジクジク、してる」  それから、枝島の、で。 「っ、ン」  奥に先端を押し付けられて、擦られて、イかされたい。 「早く……」  ガラスの壁に額を擦り付けて、身体を支えるためにガラスの壁についていた手で、枝島からは見えない孔を両手でもてあそんで。  それを全部見られてることに興奮して、またもっと疼く。  早く、して欲しい。  枝島ので奥まで貫かれたい。  もう指でトロトロになってるここを激しく突いて欲しい。 「んんんっ」  ガラスに押し付けるだけじゃ、ちっとも満たされないまま硬く勃ったままの乳首も。  今、喘ぎ声が止まらない唇も全部。 「枝島、早く……」  全部。 「……抱いて」  目の前の男にめちゃくちゃにされたい。

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