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第47話 シワくちゃTシャツ

 自分がこんなこと言うなんて思いもしなかったな。 「枝島、早く……」  でも欲しくてたまらなくて。  ガラスの壁に懇願するように額をくっつけながら、枝島には見えないだろう俺の背後、ヒクつくそこを両手で拡げて。 「……して」  そうねだる自分は想像もしなかった。  このまま溶けそうなくらいに羞恥心も込み上げてくるけど。でも、欲求のほうが強くて、満たされたくてたまらない。奥まで、全部。 「っ」  小さい声で呟いたけれど聞こえた?  枝島は立ち上がると長い脚で、足早にバスルームに来た。 「すんません。見てるだけでヤバイのに」 「……」  女性じゃないから自分からは濡れないそこが熱くて潤んでいく感じ。 「あんま煽らないで」 「っ」 「抑えきかねぇ」  カチャカチャ、とベルトの金属音が忙しなくなったのと。 「っん」  キスの、絡まり合う舌の濡れた音はほぼ一緒にガラスの箱に響いて。 「ん、ン……ぁ」  そのままその場に跪いて枝島のそれに口付ける。 「ン」  咥えたら、唾液が溢れた。 「っ、治史、さんっ」  目の前の男にめちゃくちゃにされたい。しゃぶりついて、喉奥まで咥えたい、なんて思うことがあるの、知らなかった。  目の前の男にめちゃくちゃにされたい、なんて。 「ン、ん……んく」  自分が思うなんて、思いもしなかった。 「ん、ンンン」  咥えた喉奥が気持ちいい。  口の中まで犯したいって大きな手にくしゃくしゃに髪を掻き乱されるのが気持ちいい。 「ん、ク」  舌の根元をきゅっと締めながら、何度か頭を上下させて、扱いて。  それからまた喉奥をもう少し開けないかと角度を変えながら咥えていく。  根元まではさすがに無理だけど。でも、できるだけしゃぶりつくと、枝島が俺の首筋を撫でてから耳を塞いだ。多分、本人はきっと頬の内側に自分から擦り付けたかったんだろうけど、耳、押さえられると。 「んんんっ」 「っ」  耳を塞がれて、フェラの音が直に頭の中で響く。それに目眩がするほど興奮した。 「ン、ン」 「治史さん、も、離し」  首を振った。  咥えたまま、舌で、離せと促す枝島の先端を突いて、ノックをしながら。  このまま、がいいから。 「ン」  このまま口の中で達して欲しいから。 「ん、らひて」 「っ、治史っ、さんっ」  全部、欲しいと思う自分なんて、想像もしていなかった。 「っ」 「ん、んんんっ」 「っ、っ」 「んっ…………っ」 「っ、はぁっ」  何度か激しく喉をついた枝島のが舌の上でガチガチに硬くなって、暴れたと思った瞬間、そのまま喉奥に熱を放たれた。 「っ、すげ……や……ば……」 「ん…………っ、濃い、ゲホっ」 「すんません」 「っ、ちょ、待っ」  達した、ばっかじゃん。  だから、待って、今、俺。  大慌てで、このまま覆い被さろうとする枝島を腕を突っぱねて押し返そうとしたけど。 「っ」  力入らないから、できなかった。 「治史さん……」 「っ、見る、な……よ」 「……やだ」  イったばっかりで、力が入らなかった。 「見る」 「っ、ぁっ」  上手く誤魔化せると思ったのに。跪いたままだったから、どうにか隠しながら、ベッドに移動すればバレないと思ったのに。 「イったんすか?」 「っ」 「俺の咥えながら」 「っ」  押し倒されて、見られてしまった。  喉奥で枝島のを感じて、興奮したって。しゃぶりながら、イッたって。 「治史さん」 「あっ」  枝島が着ていた服邪魔そうに脱いで、その服のポケットから取り出したゴムの袋だけ口に咥えた。脱いだ服は何かに急かされるようにシワだらけになるのもかまわず俺の下に敷いてくれる。背中、痛くなるんで、そう呟く声は上擦って掠れてる。  枝島に、身体の奥が切なくなった。  早く、枝島のが欲しいって、あの形に広げられて奥までいっぱいにされたいって。  ゴムをつけながら、背中、は平気? と訊いてくれる。  女性じゃないから、そんなに気にしなくてもいいのに。多少手荒だって折れたり、壊れたりしないのに「待て」も聞かないし、「見るな」も知らんぷりするし、夢中になって俺の口の中を腰振って味わうくせに。 「あっ……あぁぁ、あっ」  こうして優しく、不器用な丁寧さで抱こうとするのは。 「ぁ、あぁぁぁぁぁっ」  ズルいだろ。 「……あぁっ、ん」 「っ」 「あ、待、今、また」  気持ち良くて、たまらなくて、また、イクの、止まらない。 「あぁっ」 「突く度に治史さんの中、やば、い」 「っ、あぁ、ン、あン」  だって、仕方、ない。 「っ、また、俺っ」 「あ、あ、あぁっ」  枝島の硬くて熱いで身体の奥までいっぱいにされながら、夢中で腰、振りたくるから。 「あ、そこっ、イク」 「っ」 「あぁぁぁぁっ」  もっと深く繋がるようにって、足をしっかり持ち上げられて、快感で痺れてる爪先が空を蹴った。そのまま腰を浮かせて背中を丸めるようにしながら、上から突かれて。  責め立てられながら、鼻先に枝島が着ていた服があって。 「枝島、あ……ン」  気持ち、ぃ。  これ。 「っ、治史さんっ」  その服をぎゅっと握りながら、自分の口元をそれで隠した。甘ったるい嬌声をその服で抑えながら、奥深くに何度も打ち付けられて、刻みつけられる枝島の熱に身体の中がとろけてく。やらしいセックスの音がガラスの箱の中で激しく響いて、繋がった場所が溶けそう。  気持ち良くて、たまらない。  トロトロになってく。 「イ、ク……」  切なげな自分の声。 「あぁっ……イク」  とろけたセックスの音。 「あ、あ、あ」  突かれる度にする肌の打ちつけ合う音。 「あ、イク、イク」  それから。 「治史さん……」  熱っぽく掠れた枝島の声。 「あっ……イ、クっ」  全部が気持ち良くて、イクのが止まらなかった。 「あ……また、イク」  こんなに気持ちいい、欲求が満たされすぎて溢れるくらいのセックスをするなんて、二週間前の俺は想像もしていなかった。

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