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第66話 音
ボタン押すだけでいいんだよな。洗剤も柔軟剤も自動投入だから、電源入れて、スタートボタンを押すだけでいいって。楽ちんだよな。
新卒で入社と同時に一人暮らしスタート。俺と全く同じ。もちろん、俺の方がずっと昔の話だ。うちの洗濯機は俺が大学を卒業してうちの会社に入る時に買ったもので、もう十年くらい前のものになる。幸いにもまだ現役バリバリで故障することなく働いてる。けど、洗剤も柔軟剤も自分で入れるタイプだから、こっちの方が便利だなって思った。
飯を作って食べて、風呂入って、洗濯機回して、それから――。
「すんません。洗濯機」
「……いや、ボタン押すだけだったし」
「っす」
それから、抱き合って。
「寒くないか? 風邪」
「治史さん」
「!」
左手で捕まえられた。
「出てくるの早かったっすね」
「あ……」
万が一、元彰の右手が濡れてしまったら大変だから先に上がってもらったんだ。そこから大急ぎでシャンプーして身体を洗って。
じゃないと元彰が湯冷めするかもしれないから。
「ここ、準備とかできたんすか?」
「あっ……っ」
右手に触れてしまうことのないように気をつけながら、ベッドに腰かける元彰の足の間に立った。
「入る、だろ。昨日もしたんだし。平気」
「何言ってんすか。怪我したらどうすんの」
「へ、きだって……あっ」
だって、急がないと。
「も、大丈夫、ローションだけは、もうっ」
急がないと元彰が落ち着いてしまうかもしれないだろ。それが気になって急いで出てきたんだ。萎えてしまうかもしれないって。
「こっち、来て。治史さん」
「! な、待っ」
「ホントだ。ローション、塗り込んである」
「あぁっ……ぁ」
「けど、まだ硬い」
「あっちょ、待って、やめ」
「やら……」
やだ、そう舌ったらずに答えて、その唇がありえないところにキスをした。
すごい格好をしている。
「あ、嘘、ダメ……無理っ」
こんな愛撫はされたことなくて、一瞬で羞恥心に身体の奥が沸騰したように熱くなる。
四つん這いになって、元彰の唇と舌に解されるなんて。
「あぁっ、あ、あ」
「右手使えないから、こっち治史さんの手で持ってて」
「っ、あ、ああ、や、ぁっ……あぁっ」
羞恥心で溶けそう。自分の右手で尻をいじられやすくしようと広げて、腰を、元彰のキスしやすい高さまで高くしながら四つん這いで、支えきれなかった首から上、顔をシーツに擦り付けるようにしてる。そして、キスなんてしないそこにキスをされて。
「あ……ンンっ」
恥ずかしくてたまらない。
「はぁっ」
リップ音に混ざる、ローションと元彰の唾液が奏でる、クチュクチュって音。
「……あ、ダメ、だ」
「やら」
振り返るとうっすらと目を閉じた元彰がものすごいところに顔を埋めていて。
「っ」
見ただけで、腹の奥のところがきゅぅって締め付けられた。奥で元彰を感じたくて、ご馳走を目の前にした喉奥みたいに。
「も、元彰の挿れ、たい」
「……」
「それ」
行儀の悪い上司、だよな。
可愛い部下の、かっこいい恋人の、聳り立つそれを足で撫でるなんて。
「早く」
「治史さん」
「……っ、ん」
「エロすぎて、最高」
行儀が悪くて仕様のない年上の恋人、だよな。
洗濯機の回る音何してる。
生活の音。
「手、動かすなよ」
「……っす」
そこに混ざるやらしくて甘い、セックスの音。
五針も縫ったんだからな。そう言うと、元彰が、それ今日言われたの何回目って笑った。笑い事じゃない。すぐに無茶しそうだから言ってるんだ。五針なんて大したことないって言いだしそうだから。
「……あ」
「っ」
「あ、あ、あ」
ベッドに寝転がる元彰の上に跨って、自分から熱を捻じ込んでいく。抉じ開けて、クチュリって、音を立てながら、熱くて太くて硬いのを飲み込んでいく。
ズプププって。
「あ、はぁっ」
「っ」
孔の浅いところを擦りつけながら。カリに撫でられながら。
「あ、あ……」
飲み込んで、そのまま腰を浮かせて、また沈めて。
「くぅ……ん、ン」
気持ち、いい。
「あ、あ、ン」
元彰ので貫かれて、腰をあげる度に中が切なくなって、奥まで来て欲しいと自分からまた身体を沈めて、突き立てるのがたまらなく。
「……気持ちい」
「っ」
「あぁ、ンン、あ、あ、それっ」
乳首を無傷な左手につねられて、奥が尻の奥のところがぎゅっと元彰の太い部分にしゃぶりついた。星が目の奥でチカチカと瞬くような快楽。
「あぁっ、元彰、動くなって」
「無理っすよ」
「あ、あ、あ」
「治史さんの中、熱くて、とろっとろで、動くなとか、拷問」
「あぁっ、そこダメ、イク」
「しかも目の前で治史さんが腰振ってくれるとか、最高すぎるんで」
「あぁ、あ、ダメ、それっ」
「マジで無理」
腰を突き上げられて、奥をノックされた。自分から腰を振って、気持ちいい箇所を擦りながらとろけた声を溢してる。
「すげぇ気持ちいい」
「あ、あぁ、ン、イクっ、イク」
「っ治史さん」
「あぁ」
「たまらないんすけど」
「あっ………………イクっ」
俺も、そうだよ。たまらない。
「あぁぁっ」
「っ、治史さんっ」
達したのはほぼ同時。奥で感じながら、ビュクリと弾けた。
「……ぁ」
震えるくらいに感じた。
「前、触らないでイッたんすか」
「ん、だって」
だって仕方ない。
飯を作って食べて風呂入って、洗濯物をして。まるで一緒に暮らしてるみたいと思ったから。
「だって」
好きと小さく呟きながらキスをした。
そこで今働いている洗濯機の音が耳に入ってきて。本当に暮らしてるみたいで、愛おしさが増した。
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