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社員旅行編 15 紫陽花の花の群れに

 誰か来たらどうするんだよ。  会社の人が来たら? もしも見られたら?  どうするんだ?  一瞬で終わるだろ。  そう思うのに、やめられない。 「治史さんっ」 「っ」  そんなの充分わかるのに。  止められない。 「元彰……」  止めたくない。 「ここ、も」  だって、欲しそうな顔されてダメなんて言えないだろ。  浴衣の元彰がこんなガッツいた顔して、くらいつくようにキスするから、我慢とか無理だろ。  俺も、欲しいかったんだから。楽しそうに若手の中ではしゃいでる元彰を自分のところに呼びつけたくて仕方なかったんだから。浴衣姿に騒がれてる元彰に羽織着せて、どこかにしまいたかったんだから。 「乳首、触って欲しっ、っ」 「っ」  背中を反らせて、元彰の薄い唇に押し付けるように肌蹴た胸元を差し出した。元彰の黒髪を手で掻き乱して、今、俺をひん剥くことでいっぱいになってるだろう頭を抱き締める。 「はっぁっ」  気持ちいいって溜め息を夜の空に向かって吐き出して。口に含まれて、舌で濡らされて、滑る先端を歯で甘噛みされるとたまらない。腰がじくりと疼いて、下腹部を熱を孕んでたまらない。もう、そこ。 「元彰っ」  この男ので、突いて欲しくて。 「っ、治史さんっ、なんて顔、してんすかっ、こっち」  たまらない。 「!」  腕を引っ張られ、元彰と建物の壁に挟まれるようにしながら、背中を丸めて汗ばんでるだろう首筋にキスをくれる。夜で、昼間に比べれば過ごしやすくなったとはいえ、まだ暑さが充分残ってる外で。 「あっ、ん」  肌に、もっと、昼間の日差しよりもずっと熱い唇に触れられて、甘ったるい声を零してる。 「元彰の、っ」 「っ」 「ガチガチ」  浴衣の前を広げて、下着を中途半端に下ろすと、手のひらを熱がぴしゃりと叩いた。それをそのまま握ると、先走りで手の中が濡れて、元彰が俺の手の動きに合わせて苦しそうに眉をしかめてる。その表情に、痛いくらいに張り詰めた熱に、手の中が先走りでとろりと濡れたように、理性も濡れてく。 「ローション、ない、から……」  ぐじゅぐじゅに濡れていく。 「治史、さんっ」 「ぁ……む」  その場にしゃがみこみ、紫陽花の群れに隠れるようにしながら元彰のを口に含んだ。元彰は壁に手をついて、自身の足元と壁の隙間に座り込んで、頬張る俺を息を乱しながら見つめてる。 「ん、む」  パンパンに熱を溜め込んだそれを口いっぱいに含んで、できるだけ唾液で濡らしながら、自分の唾液とそれからさっき塗りつけた元彰の先走りで濡れた指で自分の後ろを撫で。  物欲しそうに、孔の口がヒクついてる。  ヤバいこと、してる。屋外で、部下のを口に咥えながら、後ろに指を咥えさせてるなんて。 「っ、はっ、治史っさんっ」  こんなの。 「っ」  でも止まらない。  元彰が欲しくて、欲しくて、たまらない。  この太いので中擦られたい。この張り詰めた先端で指じゃ届かない奥を撫でて、貫かれて、何度も犯されたい。 「元彰……」  口の中でたっぷり濡らした熱に頬擦りをして、丁寧に大事に指を添えながら、幹のところにキスをした。  上目遣いで俺の元彰を見上げて。 「治史、さん……」  その視線に今どうしようもなく興奮してるところを見せつけて。 「っんすかっ、も、マジでっ」 「!」  腕を強く引っ張り上げられた。立ち上がらされ、壁に押し付けるように背を向けさせられる。手を着いたところで、腰を引き寄せられたら、腹の底が火傷しそうなくらいに火照っていく。 「待っ、俺はっいいっからっ、ぁっ、はぁぁぁ」  たまらない。 「あ、元彰の舌、ぁ」  ゾクゾクした。壁に向かって甘く喘ぎながら、後ろを舐められて前が濡れていく。ズリ下げられても引っかかるくらい下着の中でそそり勃つ自分のがひどく濡れていくのを感じる。興奮してる。 「は、ぁっ」 「治史さんの中、すげぇ、熱い」  壁に張り付けられながら足を開かされて、鷲掴みにする強引な手に広げられて、秘部を舐められて、興奮してる。 「あっ、あっ」 「中……」  濡らされて、前も濡らして待ってる。  挿れたい? きっとすごく熱くて、すごく締め付けてやれる。欲しくて、欲しくて、奥がさっきから切ないんだ。 「あ、も、元彰のここに欲し、ぃ」  ここが欲しがって、仕方がないんだ。  孔が暗闇でも見えるように、腰を元彰へと突き出した。片手は壁について、もう片方の手は孔を見せつけるために後ろに回して、そこを広げた。 「……ぁ」  きゅう、って痺れるように焦れた下腹部に促されるように、孔が口を何度か開けて、閉じて。 「治史さん……」 「あっ」  早く、挿れて。 「っ」 「あっ!」  そのまま、一気に、奥まで。 「あ、っっっっっっっ」  ズププって刺し貫かれた甘い甘い衝撃に溢れ落ちる声を手の甲で押し留めて。 「っ、すげ、中、うねってる」 「っ、っ!」  だって、今、挿れられて、イッた。 「前、ドロドロ」 「!」 「治史さんにすげぇ絞られてる。気持ち、ぃ……っ」  だって、今、イッたばかりの中を元彰が味わうように動くから。 「っ、ふっ……ン、んんっ」 「っ、はっ」 「ふっぅっ……ん、ン、ン、んんっ」 「っ」  堪えた喘ぎと濡れた孔の中をかき混ぜるセックスの音が屋外の何にも阻まれることのない夜空に溶けてく。 「ン、んっ」  枯れて渋くなった紫陽花の花たちが耳を澄ませて聞いてる。 「ン、んっ、はっ、はっ、ふぅっ……ん」  腰をしっかりとホールドされながら、何度も、パンパンと奥目掛けて突かれると頭の芯が痺れるように気持ち良かった。 「治史さん……っ」 「ン、ンっ」  振り返ると、俺しか見てない強い視線にまで犯されて、奥がぎゅうぅって硬いペニスにしゃぶりついてく。 「すげ、気持ち、い」 「ン、あっ、元彰」  夢中で俺の中を味わって、必死に腰を突き立ててくる恋人の名前を甘ったるい声で呼んで。 「あぁっ、ンっ」  その手が乳首をキュッと抓ってくれるとたまらなく気持ち良くて、奥でお返しをするようにペニスを締め付けて。 「あ、あっ」  その、逃さないと指が肌に食い込むほど強く鷲掴みにしてくれる骨っぽい手に手を重ねた。 「元彰」  俺の。 「治史さっ、んっ」  誰にもあげない。 「あ、あ、あ、イク」  閉じ込めてしまいたいくらい、好き。 「あ、元彰っ」 「っ」 「中に、欲しっ」 「っ」 「あ、あ、あ、声、出るっ」 「っ」  俺の男。 「っっっっっっ」  奥に熱くてたまらないのを注がれた瞬間、また下着の中で達して、どろどろになりながら。 「ぁ……元彰っ」 「っ、治史さん」 「っ、ン」  甘ったるい声を塞ぎ止めた無口な唇に噛み付いて、舌を絡めた。 「すご、ぃ、腹、熱い……」  そう掠れた声で囁くと、後ろから抱き締めてくれる手が強くしっかりと俺をその胸に引き寄せてくれた。

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