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3話 真夏の祭典へ行ってきました!

 こんにちは、そろそろ覚えていただけましたでしょうか? 光屋光子、キラキラ“腐”女子、44歳です!  さて、季節は夏! オタクの皆さまにとってはお馴染みの例のイベントでございます。  この日ばかりは普段引きこもりの陰のオタクでさえも、猛暑に耐え、人混みに耐え、1年分の気力を使い果たす覚悟で戦場に赴く3日間でございます。  もちろんワタクシも例外ではございません。もうかれこれ四半世紀(なんて事! いつのまにそんなに年月が経っていたとは、ビックリですが)夫くんとともに参戦しております。  コスプレイヤーである夫くんは常にコスプレゾーンに居るため、買物代行に走り回らねばなりません。 (申し訳ありませんがワタクシの獲物のほうが優先です)  嵐の様な午前中が終わると、少し人の流れも緩やかになります。  休憩中の夫くんと合流し、その後はカメラを持ってロケーションやポーズにこだわった写真を撮ったり、他のレイヤーさんと併せ写真を撮って過ごします。  夫くんの今日のコスプレはとある人気アニメのこれまた人気の脇役、リハルドという騎士様(なんとなんと! CVはワタクシの推し、「新見駿(にいみ しゅん)くん」です! もちろんこのキャラクターも推しですから! それはもう嬉々としてカメラマンを務めましたとも!!)  夫くん渾身の再現度高いのに軽量に作られた鎧と武器、この日のために鍛え上げた肉体美(本人談)。ちなみに布製の衣装とウィッグはワタクシが制作担当です。  そんなこだわりの衣装ですから、着替えにも時間がかかるものでして、ワタクシはというと夫くんの着替え待ちの間に新規開拓でも……とばかりに、撤収間近の同人即売ブースをうろうろとしておりました。  フラフラとやってきたのは声優さんをモデルにした2次創作ブース。  いわゆる「ナマモノ」なので名前や作品名は厳重に伏せられていますが、わかる人にはわかるのですよねー。  そこで! 見つけてしまいました!!  顔の特徴を捉えた可愛らしい似顔絵に「Nさん×M君」の文字 (こっこここっここここ、これっはっ!!)  駿くん×息子!!!  慌てて口元を押さえましたが 「ぅひゃぁっぁー」  と変な声が漏れてしまいます。  こっっこれ!! 駿くんと……  とと智晴ぅ!!! うわー似てるーー!  イラスト可愛いぃぃ!!  配信番組をネタにした2次創作のコピー本に、この前のBLCDが題材のコピー本!  それから可愛いイラストのフルカラー本!!  布教用の無配本まで!!!  神か?!  良い、よすぎる!!  やーん!(ゴロゴロのたうちまわり……は大人なので公衆の前では致しませんが心の中では暴れまわって盛大にローリングしていますのでお察しください)  ひとしきり身悶えしたあと、息を整えて一言。 「全部ください!」 (こんなの買うしかない! 息子どころか夫くんにも全力で隠し通さねばならないけども!) 「あわわわわ……ありっ、ありがとうございますぅ」  ブースに居たのは2、30代くらいの社会人らしい、ちゃんとした身なりの女性。  わー! ごめんなさいー、突然こんな奇妙なおばさんが奇声をあげて大人買いなんてして、驚かせてしまいました。 (ワタクシ、本日は少々派手なオタクファッションをしております)  あわあわとしながらも、丁寧な手つきで一冊一冊包んでくれます。  よく見るとブース内にはイラストや手作りの小物が飾られており、とても愛に溢れています。  それらの小物類や見本誌を眺めて 「ああ可愛い」 「素敵」  など、つい声に出して愛でておりますと。その女性がおずおずと話しかけてくれました。 「みつ君、好きなんですか?」 (どうやらワタクシ、無意識に息子の似顔絵をスリスリ撫でていたみたいです) 「そりゃもう(産まれた時から、いいえお腹にいる時から誰よりも)大好きです!」  つい食い気味に答えてしまったが、伏せるべきところはちゃんと声に出していないはずだ。    流石に「母です!」とは言えない。  本当はとっても「息子なんですー!」と自慢したいし「応援してくれてありがとう」とも「素敵なイラスト描いてくれて尊いです!」って伝えたいのだけれど…… (あっ、一番最後のやつは言ってもいいな。よし、あとでちゃんと伝えよう)  こういった「ナマモノ」(実在の人物をモデルに2次創作をする)ジャンルは、間違っても本人を不快にさせないよう、極力本人の目に触れないようにと、  とーーても気を遣われている作者さんが多い。  SNSで本人にいいねされて、アカウントと過去作品すべて削除して雲隠れしてしまった……なんて話も聞く。  うっかり本人の母だとバレてしまっては、この貴重な神作者様を失ってしまうかもしれない。 「そう、そうね、ずっと駿くんのファンで……」 (嘘はついていない。智晴の母だということは伏せて、駿くんの長年のファンという部分だけ話そう) 「あっ。そうなんですね。私も新見さんが好きで、配信番組やこのCDでみつ君を知って……」 「そう! そのパターン!! やっぱり!」 (絶対にあると思ってたのよ! 駿くんがきっかけで、息子のファンもきっと増えているはず!! と思っていたけれど、こうして目の前にしてお話しできるとは感慨深いわぁ〜) 「2人のトークが面白くって、配信も楽しみで……」 「そう! そうなのよ! ワタクシも毎週聴いてて……」  なんだかんだですっかり盛り上がってしまった。  互いに手に手を取り合ってがっしり握手するかの勢いで(恥ずかしいのでしないけれど、気持ち的にはそれくらい嬉しくて)推しトークに夢中になってしまう。 「実は来週、2人が出演するトークイベントに当選したんですよー」 「ええー! トークイベントなんてあるの? 知らなかった」 (ちょっと! 駿くんとのトークイベントとか! ちゃんと教えてよ息子よ!!) 「ゲームショウ? そっか、ゲームはワタクシ専門外だから」 (だから教えてくれなかったのかな?) 「当日は配信もあるみたいですよ」 「ホントに! ありがとう!! 絶対に観る」  名残惜しいが、イベント終了30分前のお知らせが放送され、夫くんをすっかり待たせてしまっていることに気づき、何度も何度もお互いにお礼を言い合い、ブースを後にしたのだった。  来週の楽しみもできた。  駿くんと息子のトークイベント配信は必ず観るし、その後は先ほどのブースの作者様の活動をしっかりチェックしよう。  レポ漫画とか描いていただけたらとっても嬉しい。 (そういえば、来週末は息子、帰ってくるんだったっけ? トークイベントのことを教えてくれなかったこと、文句を言ってやらねば!)

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