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家族について編 7 こんなに好き
俺の泣き腫らした顔なんて、可愛いわけないのに。
「あ、あ、あっ、や……ン、ぁ、あぁっ」
君にキスをされて嬉しくなってしまう。
泣き腫らした顔を可愛いと言われて、たまらなく、喜んでしまう。
「千佳志さん」
たまらなく、悦んでしまう。
「あっ……ンっ、ん」
ツンと乳首を尖らせて、うなじにキスをされただけで身震いして、ペニスをどうしょうもないほど先走りで濡らして。可愛がられて嬉しそうにしてしまう。
「あ、ンっ……睦月っ」
「気持ちイイ?」
口に咥えられて可愛がられて、こくんと頷いたら、ペニスの先端を指先でカリカリと引っ掛かれた快感に背中をしならせた。
思わず、喘ぎが零れてしまう口に手の甲を押し付けて押さえようとしたら、キスをくれた。
「ン、ふっ……ン、んっ」
深くて濃くて、甘いキスで口の中をまさぐられながら。
「指、挿れるね」
「ン」
孔を指が抉じ開ける。ローションで濡れた欲しがりな孔を骨っぽい指が優しく抉じ開けて、浅いところからゆっくり慣らしてくれる。
「あぁっ」
セックス、できるように。
「ぁ、あっ、睦月っ」
前立腺を撫でられただけで悦んでヒクつく身体に仕立てて、慣らして、柔らかく。
「ぁンっ……睦月」
「ね、千佳志さん」
「?」
「貴方とこうして一緒にいられて、幸せだ」
「……」
「ホントはさ……課長とか、そういう昇進みたいなのがあんまりない仕事だから。スーツも似合わないし」
そんなことはないよ。睦月はスーツだって、なんだって。
「だから、年下で、身体が資本、ってさ、つまり故障したら仕事を失うかもしれないような仕事で」
「……」
「貴方にしてみたら」
「睦月が好きなんだ」
アスリートだからすごくとても身体に気を使っていた。水泳の選手でもあるから。そう思ってた。でも。
「睦月だから、こんなに好き」
でも、それだけじゃなかった。怪我をしてしまったら、水泳ができなくなってしまったら、仕事はままならないかもしれない。そう思って、た?
「大好き」
どこにもいなくならないんでしょう? ずっと、一緒にいてくれるんでしょう? ずっと、俺と――。
「もっと、奥のとこ」
「少し早いよ。まだ……」
「へ……き、睦月の太いの、で、して?」
甘く抱いてくれる。
たくさん可愛がって? そう、首を伸ばして、睦月の唇を舐めてねだった。腕にしがみ付くと、うなじにキスをくれた。痛かったらすぐに言ってと、耳元で優しく囁いて、俺をたくさん気遣って。
「ぁ、あ、あぁぁっ、声、出ちゃうっ」
「千佳志」
「ぁっ、ン、んんんっ、んんっ、ンっ。ん」
そして、激しく奥まで攻めてくれる。
「ンんんっ、ぁ、奥、睦月のっ」
「千佳志……」
激しくて、身体も心も睦月でいっぱいで泣いてしまう。気持ち良くて、嬉しくて、幸せで、涙が。
「ぁ、あ、あ、あっ」
「っ」
「あっ! ンっ、んんんんんっ……っ!」
ぎゅって睦月を抱き締めて、ぎゅって睦月に抱き締められて、ぽろりと涙が零れた。
「あっ……」
愛しい君が、優しく頭を撫でてくれて、嬉しそうに微笑んで、腫れぼったくて不細工だろう瞼に、丁寧に、大事に、あったかいキスをしてくれた。
「今日から、またお迎えいつもどおりだから、伊都」
「えっ!」
朝ご飯のお米粒をほっぺたにくっつけながら、伊都がとても大きな声をあげた。
「え? 何」
びっくりした。急にそんな大きな声を出すから。
朝、ジョギングに出かけた睦月の朝食にはラップをかけて、俺と伊都だけの朝ご飯。納豆とサラダとソーセージ。最近、朝ご飯が睦月みたいにしっかり摂るようになった伊都が、本日と、それから今日以降の学童のお迎え予定になんだか残念そうな顔をしてる。
「じゃあ、今日からまたお父さんのお迎え?」
「そうですけど? なんか、ダメだった?」
「睦月のお迎えは?」
「ないってば」
何、その、残念顔。睦月も大変でしょ? 仕事があるんだから。いつもどおりに戻っただけ。お迎えの時間が遅くならないんだから、よかったじゃん。帰りのお迎えがびりっケツだと、少し寂しいでしょう?
「ダメじゃないけどさぁ」
「何?」
「だってさぁ」
いや、そんな顔して、そんな返事で何もないわけないでしょ。目で諭すと、どうしようかと躊躇った後、渋々と伊都が白状した。
「睦月のお迎えだと鉄棒ちょっとだけ教えてもらえるんだもん」
「鉄棒?」
「うん。地獄回り」
すごいネーミングなんだけど。何それ。
「クラスでも誰もできないんだ。俺、できるようになりたくて、睦月が教えてくれるんだけど、戻ってこれなくてね」
戻ってこれないって地獄から? それはとっても怖いけど。
「睦月が学童にお迎えに来てくれる時、見てもらってるんだ。まだ外明るいし、誰もクラスの子いないし。どうしたら戻れるんだろう。落っこちちゃうんだよね」
地獄に?
「うーん」
それはどうにかこうにか戻ってきて欲しいです。お父さんとしては。
「難しいなぁ」
頭を捻る仕草があどけなかった。一生懸命に考える表情が愛しかった。
「睦月みたいにできるようになりたいなぁ」
そうなの? 睦月は戻ってこれるの? その地獄から。さすが。
「うーん……」
俺と、伊都の、ヒーローだ。
「頑張って、伊都」
「うんっ! 頑張るよ!」
「地獄から戻ってこれますように!」
「うんっ!」
俺もね、仕事を頑張ってみようって思ったんだ。でも、そう思ったのは、課長がああ言ってくれたからだけじゃない。
「ただいまぁ、はぁ、やっぱり朝でも暑い」
「あ! 睦月! おかえりなさーい!」
「おかえりなさい、睦月」
睦月が頑張ってるのを見て、伊都がなんでも頑張りたいって思ってるのを見て、俺も――って思ったんだ。
隣で、前で、頑張って進む睦月と伊都を見ていたら、俺も頑張りたいって思ったんだよ。
「うわ……こんなこと、できるの?」
職場でお昼休憩の間に調べてしまった。「地獄回り」ってどういうのかなぁって。そしたら、もう出だしからして俺にはできそうもない技だった。
「どうしたんですか? 佐伯さん」
「見て見て、藤崎さん、こんな技、伊都が練習してるんだって」
「? ……うわぁ、すごいですねぇ。何これ」
「ね、すごいよね。睦月に教えてもらってるって言ってた」
「ひょえぇ、こんなのできるって、睦月さん、アスリートじゃないですか! かっこよくて、イケメンで、アスリートで、優しくて、なんですかー! それ! もう、羨ましい!」
うん。そうなんだ。
「えへへ、すごいでしょ?」
素直に頷いて自慢してしまったら、藤崎さんが一瞬目を丸くして、そして、フフフって、嬉しそうに笑ってた。
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