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第45話 恋の音、蜜の音

 二本の指で、ここを濡らして、ほぐして、やらしい身体にして。早く、睦月のペニスをここに突き立てて。睦月の全部が欲しくてたまらないんだ。  はしたない願望だけれど、今はどうしてもこれを叶えたい。ここがプールで、誰もいないけれどすごく開放的な場所で、でもこんな秘められた事に溺れてる。  もう指じゃないのがいい。この身体にある気持ちイイ粒を睦月ので押して。奥を刺し貫いて。 「ぁっ……ン」  甘い声を上げて、股間にうずまる恋しい人の髪をまさぐる。濡れて、いつも以上に柔らかくなった君の髪はとても官能的だから、もっと触りたいよ。 「睦、つきっ」  もっと、近くに来て欲しい。 「あ、ンっ……睦月っ、は、ぁっ」  口の中で扱かれるペニスの快感に背中を晒せて喘ぎながら天井を見上げた。強い照明に目が眩む。睦月の舌にペニスの先を舐められて、眩暈がする。前も、後ろも、もうこんなにやらしい音を立ててるのに。 「ね、睦月、っ、あぁぁぁぁっ!」  派手な音を立てて、睦月に吸われた。そして、敏感に、やらしくなった身体は二本の指へお返しみたいに、きつくしゃぶりついてしまう。 「何? 千佳志さん」  今、君にどんなふうに見えてるんだろう。プールサイドで愛しい人のジャージに頬をすり寄せて、匂い嗅いで興奮して、指をくわえ込んだ孔の口に喘いでる俺って、ひどい? それともひどく興奮する? 興奮してよ。 「言って?」 「お願い」  射抜くように俺を見つめる君の瞳にだって、俺は今、すごく興奮してる。淫らでやらしいから。 「指じゃないの、欲し、睦月ので、奥まで、してっ、ぁっ……ン」  もうたくさん愛撫されて、ほぐされてキスマークがたくさんついてるだろう脚の間からずるりと抜けていく指。そして、次に訪れる質量をもう知っていて、喘ぐようにヒクつく孔の口。  水の中にずっといた睦月がようやくあがってきてくれた。ザバァっと音を立てて水飛沫がスコールみたいにプールサイドをそこだけびしょ濡れにしていく。 「千佳志さんが欲しいの、って……これ?」 「……」  まるで人魚が陸に上がってきたみたい。綺麗な人魚。 「千佳志さん?」  俺だけの、人魚。 「欲しいよ」  だから手を伸ばした。君から滴り落ちる、雨みたいに降り注ぐ雫にびしょ濡れになりながら手を伸ばして、頬に触れた。 「千佳志、さん?」  この人魚と恋ができるのなら、びしょ濡れになっても、冷たい水の中でも、躊躇うことなく手を伸ばそう。 「抱いて……」 「千佳志」 「たくさん、抱いて? 一ヶ月、濡れてなかった奥までびしょ濡れになるくらい、たくさん、俺の中で、イって?」  手を伸ばして引き寄せて、脚を開いた。 「あっ……ァっ、熱いっ」 「ッ、千佳志っ」 「あァっ……あ、あァァっ……ァ、あああああ!」  ずぶりと突き刺さる熱。身体はトロトロにほぐれて柔らかいのに、君が俺の中にいるのが嬉しくてたまらなくて、しゃぶりついて、睦月の形を中で感じて、我慢できなかった。貫かれて気持ちイイってきつくなってしまう孔を君に抉じ開けられて。 「あっ…………ンっ」 「イっちゃったんですか?」  小さく頷いた。そんなわずかな身じろぎですら、内側がきゅんって締まる。 「睦月」  君が中にいる。 「動いて平気?」  俺の中でビクンビクンって暴れてる。 「い、よ……いっぱい、奥、来て? 俺のこと、ァン……」  一ヶ月ぶりの熱はたまらなく恋しいから、たくさん、して? 奥に溢れるくらい、注いで、睦月で、俺のこと、びしょ濡れにして? 「たくさん、奥、掻き混ぜて?」  ねだりながら、柔らかい髪をぐちゃぐちゃに掻き乱した。君の髪を撫でるだけでも気持ちイイから、ほら、ね? 「あんまり、締め付けないで。気持ち良すぎです」 「あ、あァっ……ン」 「貴方の中」  だって、君とすることは全部気持ちイイんだから仕方ないよ。 「あっあァっ……ン、激しっァ」 「すごい、眺め」 「?」  睦月に揺らされて、水音よりも甘い蜜の音がプールに響く。 「ここで、俺のジャージの上で」 「やっ……あ、ン、乳首、はっ、今、噛まれたら」  舌で転がされて、吸い付かれて食べられるんじゃないかってくらい齧られて、孔の口をきつく締めてしまう。 「喘ぐ千佳志さん、色っぽくて困る」 「あ、あァあっ、奥、コンコンって……ン、ァ、ダメ、触っちゃ、ダメ」 「貴方とこんなやらしいこと、してて、止められるわけない、のに」  奥が君を欲しがって火照ってる。早く飲ませて。 「触っちゃダメ、なんて意地悪しないでください」 「あ、だって、あァっン……イっちゃうっ、から、ァ、あ」 「千佳志」  びしょ濡れにして。 「一緒に……イって?」 「っ」  君でいっぱいになりたいんだ。睦月のを溢れるくらいに注がれて、恋でいっぱいにしたい。好きな人と繋がって満たされたい。 「イって、くれる?」  君が好きでたまらないんだ。 「ホント、貴方は」 「あっン……ァっ奥、いっぱいっ」  がつがつ攻められて、蜜音が激しくなる。突き上げられて、じわじわ膨らむ快感がもう溢れそう。 「千佳志っ」 「あァっン、あンっ……あ、ァっ」  睦月の切っ先が何度もそこを突いて、攻めるから。 「あ、あァァァァァァっ」  貫かれて弾けるように熱が溢れた。 「っ」  俺の中に射精しながら、息を乱す睦月に胸がときめく。すごくやらしいこと、してるのにね。ベッドじゃない、こんなところでセックスしてるのに、胸ではしゃぐこの鼓動は恋の感じなんだ。拙くてたどたどしくて、まるで初恋みたいに飛んで跳ねて忙しない。 「っ、千佳志、さん」 「……」 「平気? 背中」  汗を滲ませて俺の中が君に吸い付いてしまうことに、また顔をしかめるのがたまらなく男っぽくてドキドキしてしまう。目を合わせたら、飛び上がってしまいそうなのに、俺のこと見て欲しくて覗き込んだんだ。 「千佳志さん?」 「……っぷ」 「は? なんで、笑うんです。ちょ、笑いながら、締め付けないでっ」 「だって、だってさ」  ここのプールであんなに怖くて悲しくて、寂しい気持ちになったことがあるのにさ。 「だって、じゃないですってば。そんなきつくされたら、もう、また」 「だってね。君のこと、好きなんだ」 「……」  そのプールで君に出会って、恋をしたら、こんなに甘い幸福が待ってたんだなぁって、なんだか不思議だったんだよ。 「だから、もっと、して?」  そして、繋がったままだった俺たちの間に、甘い甘い蜜の音がまた響き始めてた。

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