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二人で留守番編 9 恋人時間

「伊都の髪質って、千佳志似?」 「んー、どうだろ。そう、かな」 「でも、頭の形は同じだ」 「え? 頭の形にも似るとかある?」 「あるんじゃない? 親子だから」  そうなんだ。似てるのかな。同じような頭の形? してるの?  言われて急に自分の頭の形が気になりだした。睦月はそんな俺の髪を乾かしながら、似ているらしいその頭にキスをしてくれた。  シャワーで熱と一緒に酔いがお湯に流れて、でも、さっきの行為の余韻で今度は指先がふわふわしたまま。洗面所の前に二人で満員電車さながらに、ぎゅっととじこもってる。 「このくらいでいい? 後でまたシャワーするし」 「あ、うん」  後でまたシャワー。  それが意味していることを思って、頬がキュッとした。  俺は上だけ着てて、睦月はまだ腰にバスタオルを巻いてるだけ。  だって、今から、する、から。 「千佳志、のぼせた?」  意地悪。  のぼせて頬が赤いわけじゃないって知ってるのに、わざとそうやってきいてくるの。  意地悪な質問に頷くことなく、シャワーしながらたくさん交わしたキスで柔らかくなってる唇を結ぶと、その唇に睦月が笑顔の唇で触れてくれる。 「好きだ。千佳志」 「っ」  まるでおはようの挨拶のように、ふわりと、告げられた言葉一つに、キュンってした。  いつもは、小さく、小さく、日々の中で触れ合う指先とか、重なる視線とか、笑顔で俺のことを呼んでくれる優しい声とかに混ざて、渡してくれる「好き」を、こうして言葉でもらえるとたまらなくなる。 「お、れも……」  睦月が好きでたまらなくなる。 「好き、だよ」  大きな手で乾かしてもらったふわふわな髪、頭を傾げて、そっと唇に告白と一緒に触れた。 「だから」  触れて、ちょっとだけ舐めて。 「続き、したい」  まだルームウエアの上しか着てないだらしのない格好のまま、その逞しい肩に抱きつく。それからそっと、その耳元にできるだけ唇をくっつけなから囁いた。 「ベッドに」  ソワソワしながら、誘った。 「わっ」  抱きついてはみたけれど、抱き上げられるとは思ってなくて、咄嗟に、声、出ちゃった。  重いでしょ? 男だもん。しかも、別に美少年でもなんでもない、ただの歳の上の男だもの。おろしていいよ? ねぇ。そう思って内心慌てながら。  ただじっと、ベッドまで運んでくれる肩にしがみついていた。 「今日、ゴムしなくても……」  ベッドに運んでもらって、睦月を待ちながら、ポツリと呟いた。  そんな、目丸くしないで。  そして、そんな困った顔しないで。 「はぁ……」 「!」  溜め息をこぼしながら濡れた髪をかき上げた君が少しだけ頬を赤くしてた。 「だって……」  男なんだし、それ、しなくても、その……つまりは。 「ダメ。明日も仕事でしょ? 千佳志の仕事、お盆休み前はいつも忙しいんだから、あんまり負担かけないよ」 「負担だなんて」 「今日はダメ。また今度」 「でも」  今日は、その二人っきりだから。たくさんしても平気だし。睦月と、今夜なら。 「俺はいつも貴方とこうしてられて嬉しいよ」  いつもは、こうできないでしょ。  自由に身軽に、はできないでしょ?  相手が俺じゃなかったら、することのない苦労がある、でしょ? 「千佳志」  独身だったら。だから、今日は――そう言おうとしたら名前を呼ばれた。 「豚肉は疲労回復にいいから」 「? 睦月?」 「夏野菜、オクラとか、かな。夏バテ防止になるとか」 「……」 「あと低カロリーの蕎麦、とか」  それはいつも買い物の時に気をつけてる事。アスリートでもある睦月の身体作りに少しでも役立てられたらって。 「いつも俺と伊都のために、食事を気にかけてくれてる。俺も作れる時には飯、作ってるからわかるよ。バランスとか考えるのは大変だって」  大変なんかじゃない。 「千佳志とこうなれて本当に幸せだなって思うよ」 「……」 「千佳志とじゃなかったら、俺は今みたいに幸せになれてない」  あぁ、どうしよう。 「ありがとう」 「……ぁ」 「だから今日も明日も、もちろん昨日も変わらない。愛してる」  いつもどおりに大事に愛してくれる睦月のことが。 「あっ……ん」  好きでたまらない。 「千佳志」 「ン」  奥まで入れて欲しくてたまらない。 「あっ……入って」  だから、早く。 「挿れるよ」  来て。 「あ、あ、あ、あぁっ」  自分から脚を抱えて、抉じ開けられる快感に爪先まで痺れる。  熱くて、硬くて、睦月のが俺の中を丁寧に優しく、でも、力強くいっぱいに広げてく。 「んんんっ」  そこ擦られるの。 「あ、あっ……ん」  ゴム越しなのに熱くてとろけちゃいそうになる。奥まで来てって腰が勝手に揺れて。 「あ、あ、あ、睦月、それっ」 「千佳志の好きなとこ」 「や、ぁ……ン」  くねる腰を捕まえられた、つま先立ちになるくらい腰を両手で抱えられて、狙い打ちされる中が気持ちいいって睦月の熱に絡みつく。中が睦月にしゃぶりついて。 「千佳志」 「あ、あ、ダメ、イッちゃう」  声、いつもは我慢しないといけないから。だから、ね。 「やぁ……ン、あ、ン、あぁ……あン睦月、っ、そこ」 「ここ?」  だから、今日は。 「ここ」  自分で脚を抱えて睦月のが欲しいってねだって、甘えた。恥ずかしいよ。年上で、もう、全然、ただの同性で、可愛げなんてない、だいの大人で。でも、少しでも伝えたいんだ。 「睦月、もっと、して」  睦月のことが好きで好きでたまらないよって。 「睦月」 「うん、千佳志」 「や、ぁ……ン」  全身を使って伝えたくて、大胆に、愛しい人に濃厚なキスとセックスをねだった。

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