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04ヴァニタス・アッシュフィールド7歳

スヴェンがスピルスに頭を下げて部屋を出ると、スピルスが俺のそばに来る。 「初めまして、アッシュフィールド公爵のご子息」 しっかしこいつ、間近で見ると……。 「目がでけぇ……やべぇ、マジモンの美少年じゃんか……」 このゲーム、元はドット絵のクセにモブである俺含めて無駄にAPP高くねぇ? まぁ、スピルスはデザインされたイラストがあるんだから当然かもしれねぇけど。 そんなスピルスは俺の言葉を聞いてぶふっと噴き出した。 「私を見ての第一声がそれとは……流石に初めてです」 「しゃあねぇだろ?俺は魔法とかそういうの使えねぇし、外見に目がいくのは……いや、俺って魔法使えんのか?」 やべぇ。 30年前のゲームのモブの攻撃パターンなんて流石に覚えてねぇぞ。 スピルスは元々大きな瞳を更に丸くすると、右手を口元にあてて、ふむ……と呟く。 「私の見立てでは、貴方が使用できるのは領域魔法ですね」 領域魔法とは何ぞや。 「結界と言えばわかりやすいでしょうか?領域内に魔物が侵入できないような障壁を張ったり、領域内での出来事を全て知覚したり……」 何だ、その地味な魔法は。 …………いや、そうでもねぇか。 それどころか、例のボロ屋敷で引きこもり物書き生活するにはピッタリの魔法かもしんねぇな。 「その魔法を使いこなせるようになる為にはどうしたらいい?」 スピルスはまた口元に手をあてて、ふむ……と呟く。 「私で良ければお教えしますが?」 「まじで!? いや、お前その年齢だけど何か偉い大賢者とかだろ?」 「貴方…………」 あ、しまった。 ガキのヴァニタスが知る筈ねぇ情報だったか? 「よろしい。確かに私は賢者見習いで多忙ではありますが、それ以前に子供でもあります。同じ年頃の子供と“遊ぶ”くらい、師も許してくれますよ」 だよなぁ。 いくら頭が良くて魔法が使えるからって、こいつまだまだガキだしなぁ。 「貴方が記憶喪失になった原因の調査もしなければいけませんし、個人的にも貴方は大変興味深いです。同じ年頃の子供と話しているとは思えない」 そりゃなぁ。 就職失敗して非正規雇用。 ボーナスなんて貰ったことないし、むしろそんなのマジでこの世に存在するのかって感覚の底辺オブ底辺だけど、一応中身は四十路手前のオッサンだからなぁ。

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