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03魔法師団

「つまり、この猫のぬいぐるみはソルティード様で、ヴァニタスが錬金術で作った猫のぬいぐるみにソルティード様を憑依させたと」 「うん、そういうこと」 「馬鹿かー!? ソルティード様と言えば、このラスティル王国トップレベルの厄ネタですよ!? この世間知らずがー!?」  何かすげー罵倒されてる。  スピルスに罵倒されるなんて新鮮だな。 「しかもこの猫のぬいぐるみ、私に敵意を向けていませんか? 正直痛くも痒くもありませんが……」 「ほう……なら苦悶に喘ぐ方向で攻撃してやろうか」  ソルティードが猫から生前の姿に変身する。  スピルスの顔から血の気が引いた。 「やめてくださいソルティード様!! 私はまだ恋人といちゃつくことすら出来ていないんです!! まだ死にたくなーい!!」 「その恋人ってヴァニタスのことだろうが!! ヴァニタスに手を出そうとするなんて100万年早い!!」 「完全に厄ネタに好かれちゃってるじゃないですか!! ヴァニタスの馬鹿ー!!」  ん?  好かれてる? 「好感は持たれてるとは思うけど、ソルティードが好きなのは俺じゃなくてセオドアだぞ?」 「あー!! もう!! ヴァニタスの鈍感!!」 「なぁ、ソルティード。お前が好きなのはセオドアだよなぁ?」 「愛しているのはセオドアだが、ヴァニタスは俺とセオドアの息子みたいに大切に思ってるぞ」  スヴェンと同じこと言ってる。  父親キャラがまた増えた? 「ほら厄介ごとが増えてるじゃないですかー!! 最初は息子のように見えてて、後々好きになるフラグー!! ヴァニタスの馬鹿ー!! 人たらしー!!」 「スピルス、お前そんなキャラだったっけ?」 「真面目な堅物じゃ、人たらしの恋人なんてやってられないんですよ!!」  息を切らしたスピルスが、さっきディアドラが用意してくれたお茶を一気飲みする。 「柚希さん!! 貴方がついていながら、何やらかしてるんですか!!」  お茶を飲んで落ち着いた……と思ったら、全然落ち着いてなかった。  今度は怒りの矛先が柚希に向かってる。 「ヴァニタス君とセオドア様は似てるからね。ソルティード君がヴァニタス君に剣を向ける可能性は低いと踏んだんだ。案の定、ソルティード君はヴァニタス君を息子として認識しているみたいだし」  対する柚希は冷静に受け答えてる。  そういえば柚希はソルティードに仮初めの身体を与えるの、反対はしなかったな。 「ヴァニタス君の護衛は多ければ多い方がいい。それも、絶対に裏切らない護衛が」 「…………どういう事ですか?」 「お兄さんがヴァニタス君とラスティル王国に肩入れしていることに響哉君がそろそろ気づく頃でしょ?」  スピルスがますます頭を抱えた。 「柚希さんがラスティル王国から立ち去れば……」 「お兄さんが立ち去れば、響哉君がラスティル王国とヴァニタス君を見逃すと思ってる? それこそ響哉君に対する認識が甘いんじゃない?」 「…………」  スピルスが溜め息を吐いた。  俺は背中を擦ってやる。  恋人だからこれくらいはするべきだよな。  ソルティードがすごい表情でスピルスを睨んでいるけれども。 「私とジェラルド・ティアニーだけでは力不足ということですか」 「もちろん、スピルス君とジェラルド君の力は必要だよ? でも、念には念を入れておいた方が良いとお兄さんは思うの」 「…………柚希さんの考えはわかりました」  スピルスが俺を見る。 「ヴァニタス、いくら貴方には心を許しているとはいえ、ソルティード様は怨霊です。しっかり手綱を握るんですよ。彼が皆に貴方のような態度を取るとは思わないことです」 「そう……なのか?」 「貴方、私に対する彼の態度を見て、何とも思わないんですか!!」  ぶはっ!!  柚希が吹き出した。  お腹を抱えて大笑いしている。  別に、ソルティードが善人だとは思わない。  むしろ悪人だと言うのもわかってる。  それでも、悪は悪、善は善と断じる能力は俺にはないと思うんだ。  柚希が魔王を魔王と呼ばず、“響哉君”と呼ぶように。  俺もソルティードを怨霊や厄ネタではなく“ソルティード”と呼びたい。  彼自身を見たい。  スピルスが俺を心配してくれてるのはもちろんわかってるんだけどな。

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