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02謁見
「ヴァニタス、隣に居るのがユズキ殿か」
「あぁ。ユスティートは初めてだったよな」
「皆から話は聞いているが……」
「ユスティート陛下、お初にお目にかかります。柚希と申します。今のこの姿は仮の姿で、正体はスライムでございます」
ユスティートの瞳が輝いた。
そういう所、まだ子供だよな。
わかるわかる。
スライムが人間に変身って少年ならときめくよな。
反対に、アレクシス宰相は不快そうな顔をした。
「王宮にスライムを連れ込み、陛下に謁見させるなど、私の目にはやはりヴァニタス様は狂人としか思えません。何故アッシュフィールド公爵様はヴァニタス様の幽閉を解き、代わりに姉上を……」
そうか、こいつは俺の代わりにマドリーンが幽閉されたと思ってるのか。
「ユズキ殿はヴァニタスだけではない、セオドア先王の窮地も救ってくだされた方だ。ヴァニタス同様、無礼講とは言え、失礼は許さぬ」
「はっ。重ね重ね申し訳ございません」
ユスティート、すげぇカッコいい。
でも、アレクシスは口だけだな?
顔は全く反省してねぇもん、アレ。
そして、俺の肩の上で驚いているソルティード。
柚希がセオドアの窮地を救ったのは本当だぞ。
アッシュフィールド公爵家での親父との対談。
あの時柚希がいなければ、セオドア含めて俺たちがどうなっていたのかわからない。
…………まじで全滅してたかもしれねぇもんな、あの状況は。
「ところで、ユズキ殿は不思議な衣装を着ているが、それはどこの国の衣装なのだ?」
「日本という国です。アレクシス・ピンコット宰相はご存知ありませんか?」
「…………なっ!?」
アレクシス宰相が息を飲んでいる。
ゆ……柚希?
「否定もしなければ『知らない』と吐き捨てることもしないんですね?」
「…………」
「失礼致しました、ユスティート陛下。日本という国はこの世界にはありません。私がスライムとしてこの世界に生まれる前に住んでいた国です」
柚希がサラリと説明する。
しかし、皆の視線はアレクシスに集まっている。
「アレクシス宰相、日本という国を知っているのか?」
「…………さぁ、知りませんね」
多少間があったが、アレクシス宰相は笑顔でユスティートの問いに答えた。
流石……なかなか手強い。
「ユスティート陛下は転生者の話はご存知なのですか?」
「あぁ、おおよその内容は把握している」
「ではアッシュフィールド公爵夫人が転生者であったことも?」
柚希は攻撃の手を休めない。
そして今度の攻撃は効いたようだ。
アレクシス宰相が真っ青になっている。
「…………アレクシス宰相?」
「姉さんが、転生者?」
アレクシス宰相は確かにそう呟いた。
…………が、すぐに元の胡散臭い笑顔に戻る。
「口の上手いスライムですね。予言によれば、このラスティル王国を滅ぼす魔物は王に成り代わると聞いています。ユズキ殿、貴方がその魔物ではないのですか?」
またそれか。
柚希はクスクスと笑う。
「そこまで私を危惧するならば、今此処で私を斬ればよろしいのでは? 隣のスヴェン殿に命じれば私などすぐに斬れるでしょう?」
「王の御前です。いくら貴方が危険な魔物でも、殺生など出来ません」
「本当ですか? 誰かに私を無事送り返せと命令されているのではなく?」
「…………っ!!」
「本当は私のことが不快で不快で仕方がないのに、誰かの命令のせいで斬ることも追い出すこともできないのでは?」
アレクシス宰相に注目が集まる。
苦虫を噛み潰したような表情のアレクシス宰相は……。
「陛下、私がいない方がヴァニタス様やユズキ様と話が弾むでしょう? 私はしばらく席を外します。ごゆるりとご歓談ください」
何とかあの胡散臭い笑顔を維持して、謁見の間を立ち去った。
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