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大人の役目
「セオドア先王陛下!!」
兄上を肩に乗せ王宮を歩いていると、アレクシスが俺を呼び止めた。
フィニス、ジェラルド、ノア、ディアドラもいる。
「少しお時間をいただけますでしょうか?」
謁見の間。
ユスティートとスヴェンもいる。
此処に皆を集めて人払いをした。
「アルビオンの潜伏場所を発見しました。ラスティル王国西の山奥の山小屋です」
フィニスの言葉にジェラルド、ノア、ディアドラが頷いた。
「ウィリディシア王女は無事です」
その言葉に、ユスティートがほっと安堵の息を吐く。
事件に巻き込まれた婚約者が心配だったのだろう。
「シルヴェスター・アッシュフィールド公爵令息もいます」
シルヴェスターもまた、ウィリディシア王女同様、事件に巻き込まれた被害者だろう。
この事件はアルビオンが単独で起こしたもの。
動機は“生みの親”であるヴァニタスへの怨恨だ。
「どうします? 力づくで彼らを取り押さえますか?」
フィニスがユスティートと俺を見る。
ユスティートが首を横に振った。
「アルビオンは魔王から世界を救うと予言された未来の英雄だ。できれば穏便に解決したい」
実の父親であるフィニスの問い掛けにそう答えたユスティートの頭をグリグリと撫でてやった。
ユスティートは驚いている。
「俺もユスティートの意見に賛成だ。フィニス、ディアドラ。スヴェンに代わりユスティートの護衛をしろ」
「「はっ!!」」
フィニスとディアドラが畏まった。
「スヴェン、ジェラルド、アレクシス、ノアは俺と共にアッシュフィールド公爵家の離れ屋敷に向かう。その地下にヴァニタスが避難している」
「ヴァニタスを連れて行くのですか?」
スヴェンの言葉に頷いた。
「話し合いの場を設けるべきだと俺は思う。だから、ヴァニタスを連れて行く。アレクシスとノアはアッシュフィールド公爵家の離れ屋敷で待機しろ。実の弟のお前がいれば、アッシュフィールド公爵夫人も安心するだろう」
「…………ありがとうございます、セオドア先王陛下」
アレクシスが俺に深々と頭を下げた。
「地下にはヴァニタスと共にスピルス、ユズキ殿がいる。スヴェン、ジェラルド、スピルス、ユズキ殿、俺……これだけいればアルビオンの制圧は可能だろう」
兄上が肩で身動ぎする。
兄上については伏せた。
今は話すべきではないだろう。
ヴァニタスを気遣うべきアイツの父親代わりのスヴェンが、兄上について口にすればきっと俺を気遣ってしまう。
「制圧後、アルビオンとヴァニタスに話しをさせる。異存はあるか?」
皆、首を横に振る。
「流石セオドア先王陛下、素晴らしい采配です」
アレクシスが口にした。
ユスティートが目をキラキラさせて俺を見ている。
…………養父として教えることはまだまだ山程ありそうだ。
「アルビオンもヴァニタスもまだ子供だ。子供たちの未来は俺たち大人が切り開く」
皆、力強く頷いた。
俺の肩に乗っている兄上も。
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