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01罪と罰

 どれだけの時間が経ったのか。  地下の湖にメモリアと柚希が戻ってきた。 「騎士団や魔法師団はアルビオンたちの行方を掴んだみたいよ」  メモリアがふわりと降り立ちながら言う。 「今どうするか、トップが協議中みたい」  思わずスピルスを見た。 「お前、魔法師団のトップだろ? よく考えたら、此処にいていいのか?」  スピルスは首を横に振る。 「本当はダメですよ。でもディアドラなら、きっと何とかしてくれます」  柚希は戻ってきた途端、湖の中に飛び込んだ。  湖の水に浸かったまま、こちらを見て口を開く。 「結界のことでヴァニタスを危険視したり、今回のことでヴァニタスを差し出そうとする過激派が現れたりするの、ヴァニタスがソルティードに似てるのが原因らしい。ソルティードの事件は相当ラスティル国民を恐怖と混乱に陥れていたんだね」  ソルティード。  転移前に別れた彼を思い出す。 「そのソルティードにそっくりで、尚且つ弟でもあるセオドアを忌避する声は、彼の在位中にもあったみたい。ヴァニタスが悪魔憑きって話がすんなり国民たちに受け入れられたのも、ソルティードに似てるならそりゃそうだろって事らしい」  そんな流れがあったのか。  セオドアがあっさりユスティートに王の座を譲ったのも予言だけが原因ではないのかもしれない。  国民に忌避されていたのを知っていたから、自分と同じ色を持たないユスティートに王の座を譲った……考え過ぎだろうか? 「つまり……俺やセオドア、実母レオノーラの黒髪に金色の瞳という色は、ラスティル国民には悪魔の色とされていたという事か」  それでもラスティル国民を愛せるのか?  それでもラスティル国民に尽くす事が出来るのか?  問われている気がする。  そんな風に話をしている最中に、空間が揺れた。  何度か揺れて、地下通路からの入口の封印が解かれた。  俺がそちらを睨んでいるのに気づいた柚希が腕を刃に変えて俺たちの前に立ちはだかった。  現れたのは……。 「スヴェン、ジェラルド…………セオドア、に」  セオドアの肩の上に、見慣れた色があった。 「ソルティード!? 無事だったのか!?」  スヴェンがその言葉を聞いて顔面蒼白になった。  ジェラルドの表情は変わらない。 「あー、やってくれたなヴァニタス。混乱を最小限に留めようと思ってたのに……」  セオドアが苦笑しながら肩の上の黒猫のぬいぐるみを降ろす。  途端に、ソルティードは人間の姿になった。  その姿を見て、スヴェンはすかさず剣を抜く。 「ソルティード!!」 「ヴァニタス近づくな!! そいつは!!」 「スヴェン!! やめろ!!」  ソルティードに剣を向けるスヴェンを、セオドアが制した。 「俺と兄上は和解した。だから落ち着いてくれ。今は兄上について議論すべき時じゃない」  セオドアは真っ直ぐに俺を見た。 「アルビオンとシルヴェスターの居場所を掴んだ。一緒に来い、ヴァニタス」

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