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第4話 ロジの独白①

 晴れた夜には夜空を眺めるために散歩する。私は大学で量子物理学の研究室を持っている。 ロジャー・五十嵐・リチャーズ。学生にはロジ、と呼ばれる。数冊の学術書と入門書のような簡単な本を出している。専門書はあまり売れないが入門書は学生にも人気だ。  物理学は数式の世界だ。数式は美しい。 宇宙の事は数字で表す。でも時々宇宙をこの目で見たくなる。晴れた夜には宇宙が見える。  たまに思い付くと深夜の徘徊が始まる。誰に会う事もない深夜の散歩。田舎だから深夜の人通りは全くないと思っていた。  午前2時、開放感に浸りながら歩いていると、妖精を見つけた。ピーターパン?空を飛ばないで歩いていた。 「やあ、こんばんは。夜の散歩かい?」 思わず声をかけてしまった。 「僕、時々散歩しながら夜空を観察してるんです。特にこんな晴れた新月の夜には星が綺麗だから。」 「はは、満月だったら狼男だね。」 狼男になって襲い掛かりたいような、美少年だった。  それから毎晩、夜の散歩に出るようになった。年甲斐もなく胸がときめく。久しぶりの感覚だ。 「やあ今夜も会えたね。私の家に来るかい?」  その夜から散歩は終わった。家に毎晩来てくれるようになったから。  ミトと名乗った。25才だという。もっと幼く見える。45才の私より20才も年下。  紅茶を飲みながら宇宙の事を話す。二人だけの時間。私は酒をほとんど飲まないから、深夜に紅茶だ。

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