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第8話 ロジの独白⑤
ミトは私しか知らない。私のものだ。もし女を知りたくなったらサリナのような女がいい。
しかしそんな事を考えるだけで私の心はざわつく。波立ち嫉妬の嵐がやってくるだろう。ミトは私だけのもの。愛しているんだ。こんな私を誰も知らない。
東京で物理学の会合がある。日帰りできるだろう。サリナにミトを頼む事にした。車が迎えに来る。
「サリナ、今日は手伝いの梅子さんも来ない日だから、ミトの食事を頼むよ。」
出入りの手伝いの梅子さんは週に2回ほど通ってくれる。私が子供の頃から家の中の事をしてくれている。以前はほぼ毎日来てくれたが今は年を取ったし、私も自分のことは出来るから減らしたのだ。梅子さんが疲れないように。
「まかせて、先生。
それとミトにセックスを教えてもいいかな?」
サリナならいいかもしれない。さっぱりした性格だ。ミトが女を知る事は、どうなんだろう?私は複雑な気持ちになった。
「それは本人次第だな。
私が指し図することではないな。」
ミトは私とのセックスしか知らない。他の、しかも女性を知る事は必要なのか。サリナならそれほどジェラシーを覚えなくて済むかもしれない。
その夜、私の方は大失敗だった。以前から馴れ馴れしく寄ってくる女子学生を連れて帰った。学生結婚が破綻していると悩みを打ち明けられて、結局抱く事になってしまった。
ミトに見せつけて、いい勉強になるか、と浅はかな事を考えた。普段の私ならこんな醜い失敗はしない。クールなロジャーの仮面が剥がれかかっていた。
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