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第20話 ロジとミトとハジメ

「ハジメ坊ちゃん、お客様です。 客間にお通ししました。 五十嵐様とおっしゃってますが。」 加藤さんが離れに伝えに来た。 「うん、今行く。ミトも行くか? 隠れてるのは卑怯だろ。」 僕は怖い。悪い事してるのは僕だから。 ハジメの後ろから、廊下を歩いて行った。手を繋いで欲しかったけどロジの事を思うと我慢した。  広い和室にロジはいた。 ロジはどっしりとしていて武士の風格だ。飛んでいって甘えたいけど、いけないよね。 「突然の訪問で失礼しました。 今日は私の妻を迎えに来ました。 ミト、帰るぞ。」 もう立ち上がって行こうとするロジに慌ててついていった。ハジメは力無く笑って僕に小さく手を振った。  マイ・バッハに乗るのも久しぶりな感じがする。ロジは乱暴に車を出した。  家に帰って来た。玄関で抱きすくめられた。 ああ、ロジの匂い。 「ミトは他の男の匂いをさせて、私は気が狂いそうだ。三日も一緒にいたら魂も抜き取られたか?」 ロジは痩せたみたい。僕のせいだ。 「ごめんなさい。あの綺麗な男の人は誰? 僕は悲しかったんだ。」 「ああ、モデルのユーツーだ。昔の恋人だった。」 「でも、ロジは本気のキスをしてたよ。 ずっと肩を抱いて離さなかったよ。 僕が鞭で打たれて、ロジの名前を呼んでも届かなかった。僕一人ぼっちだったんだ。 尊もいなくなって、ハジメが助けてくれたの。 傷を治してくれたの。」 「謝らなければならないのは私の方か。 三日もいなかったんだ。心まで取られてなければいいんだ。」

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