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第31話 インド・ネパール編

 駅から歩いてマイダーン公園に出た。広い公園。子供達がみんなサッカーをやってる。公園のなかを歩いて一休み。チャイ売りの人が曲芸のように高くポットのお湯を投げ上げて素焼きのカップに受ける。放物線を描いてお茶が混ざり合う。一滴もこぼさずカップに吸い込まれていく。 「凄い、こぼれないね。」 「あれでミルクと砂糖がまざるんだよ。 芸術的だな。」 ハジメと一杯ずつチャイを飲んだ。甘くて美味しい。シナモンとか、何かいろいろ入ってるみたい。飲んだらその素焼きのカップは地面に叩きつけて割るんだよ。素焼きだからまた土に帰るのはとても合理的だ。  公園の中に詩聖タゴールの碑があった。コピグル、インドの人が尊敬するノーベル文学賞を受賞した詩人だ。僕はラジニーシという人の本に影響を受けた。そういう人にはノーベル賞はあげないんだな。世の中の評価と僕の価値観は、ずれてるのかな?  少し歩いてニューマーケットっていうバザールへ行った。薄暗くて広い体育館みたいな感じだけど奥の方は暗くてわからない。 「ナマステ、ハジメ。」 インドの人が声をかけてきた。 「やあ、モノランジャン、今日はどうだい?」 その人は日本語が上手だった。ハジメの知り合いみたいだ。 「ここはヤバいかも。悪い奴等がうろついてる。 ブラックマーケットだから美少年は誘拐されるよ。東洋系の少年は高く売れる。 ブラウンシュガーを売りつけてくる奴に気を付けて。売れる子供を探してる。」 モノランジャンはハジメの耳に囁いてどこかに消えた。

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