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第32話 インド・ネパール編
「ブラウンシュガー?
ローリングストーンズ?」
「インド産の劣悪なヘロインだよ。
ガンジャくらいならいいけどヘロインはヤバいんだ。ミトは俺の手を離すなよ。実年齢より幼く見えるから。ホント、ミトは美少年だ。
早くホテルに行かなくちゃ、な。
その前に少し買い物があるんだよ。」
ハジメは僕の手を取って、マーケットの中に入って行く。途中で横の階段を上がった。2階にはまた怪しげな店がある。
「ハジメ、今日は可愛い子連れてるな。」
「俺の大切なカスタマーだから、変な事考えるなよ。この前のタンカ、まだ取ってあるか?」
奥から出して来たのは布に描かれた曼荼羅のようなものだった。広げてみると極彩色の仏画。タンカっていうらしい。真ん中に描かれている仏像はなんだか僕に似ている。
「ミト、マリーチー、摩利支天だよ。この絵はミトにそっくりだろ。
普通、摩利支天像はミトに似てるわけじゃないけど、これはこの前見つけて驚いた。この絵はミトだ。だからミトにプレゼントしたかったんだ。
摩利支天は俺の守り神なんだよ。
武士が摩利支天のお札を兜の内側に縫い付けて戦(いくさ)に行ったという。
俺の家にもそんな話が伝わっている。
ミトは俺の守り神だ。愛してるよ。」
ハジメが僕にキスしてくれた。
「これはドルでしか売れないよ。」
「エクスペンシブ!足元を見て、ひどいな。
アーナンダ、釈迦の弟子を名乗ってるくせに。」
「ハジメは随分かせいでるんだろ。」
「そんな日本人もいるけど俺は違うよ。
金には縁がないよ。」
ここでもチャイが振る舞われた。紙コップに入っていた。エコじゃないなぁ。素焼きの方がいい。
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