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第42話 インド・ネパール編
僕は今の頼りがいがある強い、正義の味方のようなハジメしか知らなかった。
「学生の頃、先輩を追って考えなしにインドに来て、ドラッグにハマってしまった。いつも死にたいと思っていた。投げやりに生きていた。もうどうでもいい、と思っていたから。
俺はゲイ、で男しか愛せない。それはもう生きる資格が無い、ということか、と悩んでいたんだ。代々続く武士の家系である事を大切にするような時代錯誤な家だったから、早く世継ぎを、と言われ続けて来た。俺は女を抱けないんだ。世継ぎなんて考えられない。
ゲイが生きるのは難しい。誰でもいいわけじゃない。学生時代、好きになった男はみんな気味悪がって離れて行ったよ。普通の友達も出来なかった。
初めて男同士のセックスを教えてくれた先輩を追いかけてインドに来た。先輩は死に、麻薬に溺れた俺はマコチンの厳しい離脱療法でなんとか生還した。残ったのは、先輩が愛してくれた俺の長い髪。だから髪を切らない。
それから誰かの役に立ちたい、と身体を鍛えた。日本では親の知り合いが多くて、外国に活路を見つけようとした。外語大に戻ってまた外国語を必死で覚えた。まず、英語とスペイン語を覚えれば大抵の国では通用すると思ったんだ。」
僕はハジメが愛しくて抱きしめてキスした。
「今だってキチンとした仕事じゃない、胡散臭い事を請け負って、金にはなるけど、安定はしない。
マコチンたちもそろそろ日本に帰るんだろ。
俺も落ち着きたい。ミトがいるからヤバい仕事は嫌なんだ。」
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