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第49話 ネパール
また怖い夢を見た。
「僕、もうガンジャいらない。」
「ミト、やっとわかったかい。自分で決めなければいけないんだ。何も使わなくても気持ちを高揚させる事は出来る。観念的に考えてもやめられない。ミトのやってるジョイントは普通のタバコの混ぜ物が多いから、そんなにキツくないけど、このまま続けてるともっと強いのが欲しくなる。
その前に気付いて欲しかった。
俺のミトはお利口だ。愛してる。」
ハジメは優しく抱いてくれた。何もなくても愛し合えば高みに行けるって、身体で教えてくれた。僕はロジがお酒を飲まない事を思い出した。
「素面(しらふ)で向き合いたい。
セックスでハイになる。お酒も薬もいらない。
そのままのミトを愛したい。」
って言ってた。ロジが恋しい。
「ハジメ、僕、ロジに逢いたい。」
ハジメが抱きしめてくれた。
「ミト、帰ろう。
チモは変わらない。変われないだろう。
自分で気付くしかないんだ。
チモのお父さんには、無理でした、って報告するよ。」
お金にならなくてもいいんだって。ただチモを助け出したかったけど、本人がここで幸せならいいのかな、って言った。
「もう、この仕事は続けない。」
本当は動物保護の仕事だけやりたかったらしい。でも組織が苦手だって。保護活動は一人では難しい。動物保護団体は世界中にあって、また少しの思想の違いで対立したりする。そのどれかに属しても肝心の保護活動からは遠ざかってしまう。人間のサガか。
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