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第50話 ネパール
「サドゥ達を見てると、なんだか大義を振りかざして活動なんていうのが無意味な気がしてくる。
なるようにしかならない、でもそれは敗北なのか?結局、生きる事を自分に問う。」
僕も中学生の頃から考えていた事。
「ガンガーを見て、ヒマラヤを見て、スラムを見て、僕には何が見えたんだろう。
ロジの研究している量子の場にはあらゆる事象が記録されてるらしい。
死ぬ事っていうのはその中の途中駅の一つなのかもしれない。
生命にはまだ続きがあるって釈迦はいう。
方便現涅槃(ほうべんげんねはん)涅槃は方便?」
「続くとしたら死んでも救われないなぁ。」
「うん、生命は無始無終、不滅みたい。
メビウスの輪?
僕中学生の頃、生きる意味がわからなくて死ぬ事ばかり考えてた。
時々怖い夢を見た。暗く絶望的な世界を垣間見る感じ。学校に行けなくなった。
仏教では元品の無明(がんぽんのむみょう)っていうんだ。人間の暗い部分。
それで命とはなんだろう?ってそんな本ばかり読んでいたんだ。主に仏教系の。」
ハジメが僕を優しく抱いて
「良かった。生きていてくれて良かった。
ミトに巡り会えた。」
「うん、僕もハジメと出会えて良かった。」
抱きついて深いキスをした。
「ネパールの犀を救いたかった。
人類が地球に現れる以前から、たくさんの動物は絶滅して来た。それを止める事は出来ないのだろう。ただ人間に無意味に殺される動物を救いたい。そう思って保護活動をやってるNGOに参加したんだけどなんか俺には組織は合わない。
それでサルベージなんていう裏稼業もやっていた。色々な人を見て来た。これが全部ではないだろうけど、もういいな。」
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