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第59話 3人
「父さん、久しぶりです。
今、俺が世話になってる五十嵐先生をお連れしました。それとミトくん。
インドから帰ってきて以来、3人で暮らしてるんだ。仕事は一区切りついたので。」
ハジメのお父さんは、ロジに会釈をして、ギロリと僕を睨んだ。
「ハジメが世話をかけているようですね。
もういい年をした大人ですから本人が選ぶ事ですが、そろそろ身を固めてもらいたい。
子供を作らないといけない年令です。
そこの所、理解していただきたい。」
ハジメのお父さんの圧が凄い。
「初めまして、五十嵐と申します。
これは妻のミトです。私は男色で色々誤解される事も多いですが、周りのみなさんには隠していません。大学の教員をしています。」
「ま、男色も武士のたしなみ、私も若い頃は、若衆の面倒を見ていました。
でもそれと妻帯する事は別です。いずれ世継ぎを産んでもらう嫁を娶らねば。
若い頃の遊びと、家を継いで行く事は、重さがちがいますからね。」
「父さん、俺は女を抱けないんだ。
子供は諦めてくれ。俺はロジャーとミトを愛してる。理解出来ないだろうけど,今日はそれを宣言するために帰って来たんだ。
二人を巻き込んでしまった。
父さんから、許しを得られるとは思っていない。
これが訣別になっても仕方ない。帰るよ。
二度と会わないよ、父さん。」
ロジは堂々と挨拶をして僕とハジメを連れて席を立った。
「加藤、塩を撒け!」
怒鳴る声がした。
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