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第65話 3人
冷蔵庫には食材がぎっしりだった。
「梅子さんだね。いっぱい入れておいてくれた。」
「梅子さんは、とにかく私たちに食べさせようとするからね。日本のお母さんって感じだ。
食べるもの食べてりゃ心配ない、って。」
お米を研いでご飯を炊く。冷蔵庫には梅子さんの作ったきんぴらごぼうや玉子焼き、茄子の焼き浸しかな、美味しそう。大根と厚揚げの煮物もある。ぶりの照り焼きと手作りのポテトサラダ。
「午前中に来て作っていったんだな。」
梅子さんはベッドシーツを変えたり掃除をしたり,といういつもの事が出来ない時は料理を作っていく。ありがたいお婆ちゃんだ。ロジが子供の頃から梅子さんの手料理で育ったって。
若い頃からロジの五十嵐家に仕えている。
もちろん結婚していて今はお孫さんもいる。ノーマルな人だ。今は週に二日だけ来てくれる。梅子さんは僕の事も可愛がってくれる。
人は一人では生きて行けない。きっと誰かのお世話になってる。でも、普通に家庭を持って子供を作ってっていう人ばかりじゃなくてもいいと思う。
僕はロジに守られてあまり嫌な思いをした事はない。でもゲイを中傷する人がたくさんいる事は知ってる。
僕はロジやハジメと手をつないで歩きたい。いつもキスしていたい。
もっと大きな意味で、生き物は子孫を残し、増やして行くのが本能みたいだ。小さな蟻でも大きな象でもみんな子供を作り増やす。生きることはつらいこと、だとしたら、何故、子供に繋いで行くのか、生きる苦しみを。
ロジに出会うまでは、いつも疑問に思っていた。
愛する人と愛し合う、それは生きる喜びだってロジが身体で教えてくれたんだ。
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