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第72話 ハジメ家を出る
ロジの家を出て、発掘現場での生活が始まった。
ハジメの仕事の現場には、発掘にかかわる大学関係者の他にも工事のための作業員が大勢いて、少し離れた町の方にアパートが何棟か用意されている。この現場に来てから、ハジメはその一室を住まいにしている。
集まった作業員は毎晩のように、近くのスナックに飲みに行く。地方都市には、飲み屋が多い。
他に娯楽がないからか、気に入った店があると何となく常連になっていく。
「ハジメさん、一人ですか?」
声をかけて来た男は現場でいつも顔を合わせる作業員だ。女の子の肩を抱いて、声をかけて来た。
「おう、いつも一人だよ。
仕事終わってまでつるむのはめんどくさいだろ。おまえ、彼女がいるのか?」
「ええ、まあ。ここで知り合ったんだ。」
「俺の事,知ってるのか?
おまえ,顔は知ってるけど,名前知らないな。」
女の子の髪を弄りながら
「ハジメさんは有名ですよ。その筋肉。
オレ、柳貴裕って言います。
タカヒロって呼んでください。」
彼女の頬にキスしながら答える。彼女に向かって
「そう言えばおまえの名前も知らないなぁ。」
女の子にそんな事を言っている。タカヒロは名前も知らない娘にキスしてるのか?
「あ、アタシはヨーコ。たまにこの店手伝ってるけど、大抵はアタシもお客さん。」
マスターが
「ヨーコは、男、探しに来てるんだよ。」
「違うよ。イイ男、探しに来てるの。
イ・イ・オ・ト・コ!」
(ヨーコは田舎のちょっとかわいい女の子って感じだな。それに比べてタカヒロと名乗った男はイケメンだ。俺の好み、ど真ん中だな。
ロジとミトがいるから、そんなにそそられる事もないが。)
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