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第73話 ハジメ

 タカヒロは背が高い。180cmくらいか。ハジメは抱くならもう少し小さい男が好きだ、などと考えた。 (タカヒロはノンケだな。女が好きそうだ。)  ハジメは退屈しのぎにいろいろと妄想して見る。どうせ部屋に帰って寝るだけだから、だんだん酒量が増えつつある。 (まだ水曜日だ。金曜日まではロジとミトに会えない。)  寂しさが募って来る。もっとキツい労働でもいいな、と考えていた。疲れて眠ってしまう方がいい。こんな事は今までなかった。外国で一人でも寂しいなどとは思わなかった。仕事をこなす事だけを考えていた。  タカヒロは女の子を弄りながら、こっちを見ている。思わせぶりな素振り。 (うん?何だ,こいつ。)  しばらくヨーコの耳元で何か囁いたり、二人でイチャイチャしていたが、時計を見て 「マスター会計を。」 「アタシはどうするの?」 「家にお帰り。オレは明日も仕事なんだよ。」 「じゃあ金曜日の夜は? アタシの家に来ていいよ。」 「考えとくよ。でも多分無理だな。」 「ひどーい。」 タカヒロは帰る時、俺を見て 「会社のアパート、隣の棟だよね。 そろそろ帰りませんか?」 と聞いて来た。朝も早いし、帰ろう。 「マスター俺も会計して。」 ドアを開けて外へ出た。 「ヨーコ、抱いてもらえなかったな。」 笑うマスターにヨーコはふてくされている。 「あいつ、変な奴。触るけど軽くなの。 エッチな事はしてくれない。 ホモだったりして。」

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