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第103話 ハジメとタカ
少し遠回りして歩いた。ハジメは、このところ
ずっと自分の悩みに取りつかれていたようだ。
タカヒロとの暮らしはそんなに悪くない。何を悩んでいたんだろう。
煩わしいのはタカヒロの執着だったはずだが、こんな明るい陽射しの中では、タカヒロは光って見える。自分の狭量さに気がついた。
タカヒロの事は大切に思う。
これが男女の関係なら、プロポーズして、俺が食わせてやるからおまえは家にいて子供を作り家庭を守れ,なんて言うのだろう。周りの祝福を受けて夫婦になる、それが普通の事なのか?
俺はそんなものが欲しいんじゃない。タカヒロが欲しいだけだ。ミトもロジももちろん俺の大切な存在だ。時々じりじりするほどミトとロジが欲しくなる。でもタカヒロはいつだって欲しいんだ。
人の心はいい加減だな。その時々で変わってしまう。
「タカ、院に進むんだろ。考古学教室、面白そうだな。」
「この前発掘してた遺跡は興味深いものだったみたい。まだ続いてるよ。ヒグマの痕跡があったんだって。本州にはヒグマはいないはずなのに。
オレ、研究室、行ってないんだ。サボってる。
本当は興味が薄れてしまった。」
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