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第104話 ハジメ語り

 いつもタカヒロを抱いて眠る。愛しさが募る。愛しているんだ。でもタカヒロの興味が俺だけ、っていうのも心配だ。  タカが学問から遠ざかっている。無為な日々を過ごしているように見える。 「恋をすると何も見えなくなる。ハジメといる時だけオレは生きてる。」  部屋ではいつも俺に抱きついてそんな事を言ってるタカ。可愛い。抱き締めてキスしたい。お互いの肌を合わせて体温を感じていたい。 「ハジメ、そばに来て抱いて。」 タカにそんな事を言われるのは嬉しいのだ。  煩わしいとは思わない。  タカを抱いてその身体を愛撫する。きれいな男。いつまでもこの手の中に抱いていたい。 「研究室に休学願いを出してくるよ。退学でもいい。院生にならなくてもいいんだ。一応、卒業できてるから。」 タカヒロは自分で決めた、という。  将来なんて一番考えたくない事だ。ゲイのカップルに未来はないのか。 「ハジメは、ロジとミトが忘れられないんでしょ。オレ、いつか棄てられるの?」 そんな事は考えられない。 「タカはロジとミトの事、好きか?」 「う、ん。前は敵視してたけど、二人は特別なんだって思う事にした。」 (やっぱり好意的ではないんだな。4人で愛し合うなんて無理だ。ロジ、どうしたらいい?) タカは出かけた。俺も翻訳の打ち合わせで出版社に顔を出すから、大学の近くで待ち合わせした。

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