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第108話 4人

(ミトが泣いている。それだけで俺は罪深い。 ごめんよ。いつも俺は考えなしに流されてしまう。あの時はロジが俺を優しく受け入れてくれたから、甘えてしまった。俺はいつもそうだ。同じ事を繰り返す。) 腕の中のミトを離したくない。もう何もいらない。築いてきたものなどない。翻訳の仕事もこの前、一段落した。何もかも捨ててミトを愛したい。  タカヒロと目が合ってしまった。 「ハジメ、いつまでミトを膝に乗せてるの。 もう、帰ってもらって!」 タカヒロは自分の部屋に引きこもってしまった。 「ミト、ハジメにキスしてもらったんだ、満足しただろう、帰ろう。」 「いやっ、いやっ。ハジメも一緒に帰ろう!」 パシッ。ロジがミトの頬を叩いた。 「おまえはもう子供じゃないだろ。」  ミトは帰る車のなかでずっと黙っていた。 初めてロジに打たれたのだ。今まで誰にも打たれた事は無い。母と二人暮らしでも、ミトは聞き分けのいい子供だった。母が一人で子育てをしているから、子供心に我慢をする癖がついた。母を困らせてはいけない、母はいつも強気で頑張っているけれど、本当は弱い人だ。だから心配をかけないように、我慢するのが習い性になっていた。  ロジに出会って初めて他人に甘えることを覚えた。でもそれは性愛の時だけだ。  相変わらずほとんどわがままは言わない。いつもロジに甘え切って全てを任せているミトだが、ハジメの事だけは譲らない。インドにだって追いかけて行くほどだった。随分我慢していたのだろう。

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