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第109話 4人
ミトの気持ちを思うと胸が張り裂けそうだ。ロジまでタカヒロを恨んでしまいそうだ。
こういう時にはニュートラルな立ち位置でいるべきなのはわかるのだが。
「ミト、家に着いたよ。玄関の鍵、開けられるか?」
「うん、今開ける。」
しょんぼりと肩を落として車から降りるミト。家に入ってソファに座らせる。
「おいで、ミト。ロジにキスしておくれ。」
髪を撫でて口づける。ミトはされるままになっている。人形を抱いているようだ。
「ミトはハジメが恋しかったんだな。
気付いてやれなくて悪かった。どうしたいんだ?
ミトは、どうするのがいいと思う?」
こちらをジッと見つめて、その瞳から涙がこぼれ落ちる。とめどなく流れ落ちる涙。美しい。
「わからないの。僕は人を好きになった事が少ないんだ。母さんを別にしたら、ロジが初めて。
その次はハジメ。好きになった人は二人だけ。
無理矢理別れたのはハジメ一人。
どうしていいかわからない。
ロジもハジメも僕を愛してくれたでしょ。手に入らない思い、ってどうしたらいいの?
ロジは誰かを欲しくて、でも手に入らない、なんて事、今までにあった?」
「一気にしゃべったね。
息を吸って、落ち着いて。」
愛しくてならない。手の中で震えている小鳥。
「私は、今までそれほど執着する恋人はいなかった。
ミトと出会ったのは奇跡。はっきり言おう。
こんなに愛したのはおまえだけだよ、ミト。
五月雨を超えた。
ミトを失ったら生きていけない。だからハジメを受け入れたんだ。」
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