109 / 240

第109話 4人

 ミトの気持ちを思うと胸が張り裂けそうだ。ロジまでタカヒロを恨んでしまいそうだ。  こういう時にはニュートラルな立ち位置でいるべきなのはわかるのだが。 「ミト、家に着いたよ。玄関の鍵、開けられるか?」 「うん、今開ける。」 しょんぼりと肩を落として車から降りるミト。家に入ってソファに座らせる。 「おいで、ミト。ロジにキスしておくれ。」 髪を撫でて口づける。ミトはされるままになっている。人形を抱いているようだ。 「ミトはハジメが恋しかったんだな。 気付いてやれなくて悪かった。どうしたいんだ? ミトは、どうするのがいいと思う?」 こちらをジッと見つめて、その瞳から涙がこぼれ落ちる。とめどなく流れ落ちる涙。美しい。 「わからないの。僕は人を好きになった事が少ないんだ。母さんを別にしたら、ロジが初めて。  その次はハジメ。好きになった人は二人だけ。 無理矢理別れたのはハジメ一人。 どうしていいかわからない。  ロジもハジメも僕を愛してくれたでしょ。手に入らない思い、ってどうしたらいいの?  ロジは誰かを欲しくて、でも手に入らない、なんて事、今までにあった?」 「一気にしゃべったね。 息を吸って、落ち着いて。」 愛しくてならない。手の中で震えている小鳥。 「私は、今までそれほど執着する恋人はいなかった。  ミトと出会ったのは奇跡。はっきり言おう。 こんなに愛したのはおまえだけだよ、ミト。 五月雨を超えた。 ミトを失ったら生きていけない。だからハジメを受け入れたんだ。」

ともだちにシェアしよう!