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第115話 スーツ、裸ネクタイ

 誰もがいつかは死ぬのだ。その人生の中で愛する人に巡り逢えれば、それは素晴らしい事だ。  ロジにとってそれはミト。五月雨を凌駕する存在。掌中の珠、なのだ。 「ミト、スーツを誂えよう。大人らしくカッコいいスーツ。」  突然のロジの思いつきで銀座のテーラーへ連れて行かれた。ロジ御用達の"テーラー嘉穂"。  腕のいい店主が気持ちの良い仕立てをしてくれる。サー・リチャーズが気に入って、当時ロンドンで修行中だった嘉穂氏を東京に連れて来た。  今では銀座の"テーラー嘉穂"は知る人ぞ知る名店だ。 「成人式用に母さんが買ってくれたスーツがあるよ。」 「もう一着作っておこう。ミトはきっとカッコいいはずだ。」  何回か仮縫いをしてスーツが出来て来た。小鉄がコーディネートして靴やベルト、シャツなどを揃えた。 「楽しいわ。ミトちゃんは着せ替え人形よ。 どこへ行こうか?見せびらかしたいわ。 旅行とか、とりあえずパーティね。」  帰って来てロジが 「写真撮りたい。スーツだけ着て、素肌にネクタイ。色っぽい。最高にエロい。」 このところずっと、ロジに半ば強制のように筋トレをさせられて来た。 「ああ、ミト、ちょっと動いて。くるっと回って。上着が捲れて腹筋がみえる。この頃腹筋が割れて来ただろ。エロいな。セクシーだ。」 「写真撮るために高いスーツを作ってくれたの?」

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