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第138話 愛の行為

 いつもの愛の行為。二人とも疲れてグッタリしてしまった。ロジの胸の中で安心している。 「ミト、寂しくないか?」 「いつもならそんな事聞かないのに、どうしたの?」  ロジは二人の間に漂う寂寥感を持て余していた。強く抱いてもなんだか寂しい。  ミトの顎に手を添えて優しく口づける。柔らかく舌を入れて探るようにしている。 「ロジ、いつもと違うね。優しい。」 「う、うん、ミトは柔らかいね。全部食べてしまいたい。」  ゆったりと抱かれて夢見心地になった。ミトは気づかない。ロジの胸に一抹の不安があるのを。 言葉に出来ない、まだ、形になっていない漠然とした不安。 (私の腕の中から飛んでいってしまうのか。 インドにハジメを追いかけていった時も、こんな不安な気持ちにはならなかった。) ミトを強く抱きしめる。  一方ハジメは昔の事を思い出していた。 タカヒロをその手に抱きながら、若い頃の事を思い出していた。  もう十数年前。ジェロニモが死んでから、誰も愛せなくなった。初めての男。ハジメを一人残して先に逝ってしまった。  人生がガラッと変わってしまった事に、慣れるのに時間が必要だった。  ジェロニモに抱かれて自分はゲイだと自覚した。ジェロニモのセックスに溺れた。それは幸せな事だった。初めての快楽。

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